駒絽作務衣 嵯峨野・葉山(こまろさむえ さがの・はやま)

「透かしの美学」の究極の贅――。季節を存分に楽しむための絽の誕生。
夏姿の究極は絽に尽きる、と言われるように、目にも風を呼ぶ絽の透明感は、この季節になるとお洒落の達人たちをはじめ、多くの人々に愛されてきました。
その、「透かしの美学」の究極版を創るべつ採用したのが、古来より伝わる「捩子織(もじりおり)」で織られた三本駒絽と呼ばれる生地でした。
夏着尺として、古くから大店の旦那衆などが好んで求めた高級感あふれる生地で仕立てた作務衣をまとえば、「いよっ、粋だね!」の声のひとつも飛んできそう。

透かしの美学の準主役・肌着について

「透かしの美学」を取り上げるにあたって、その美学をさらに活かすポイントをご紹介いたします。
透け感を活かすには“いい肌着を合わせるべし”というのが洒落者の鉄則。「透かし」の粋にて、着る人も見る人も涼を楽しめる紗が初夏からの主役ならば、重ね着にて透かして見える肌着はいわば準主役。
だからこそ、よりいっそうの気遣いとこだわりで選び、袖を通したいものです。
衣装に凝ることはもちろんですが、折りしも汗の季節、素材にも手は抜けないことは言うまでもありません。
お勧めは、夏の素材の代名詞“麻”の肌着です。
本麻ならではの爽快なシャリ感、優れた通気性、そして重ね着した紗を透かして放つ潔いまでの白の清々しさは、この季節ならではの、粋な着こなしの楽しみと言えましょう。

縦紗作務衣 沢緑(たてしゃさむえ さわみどり)

シャリ感と清涼感。周囲の目にも涼を呼ぶ。
縦紗(たてしゃ)と呼ばれる、江戸時代から伝わる技法を採り入れた織りが実に印象的。
縦糸一本毎に経糸に捩れ目を造るという独特のもので、それにより微妙な透かし加減の味わい深い生地を創り上げました。
通常の紗を数段越えた、心地よいそのシャリ感と清涼感は、着る方の満足感に加え、「周囲の目にも涼を呼ぶ」絶品。
季節先取りで袖を通せば、いつにも増して凛と背筋が伸び、行き交う人の熱い視線を、より多く集めること請け合いです。

麻混紗作務衣 侘茶(あさこんしゃさむえ わびちゃ)

紗の透かしを通して、心地よい夏が見えてくる…通好みの彩りを放つ作務衣。
いにしえよりお洒落の達人たちが好んでまとったという紗。暑い夏に重ね着をすることにより、透かし加減で、涼感を演出するという逆転の発想が、今も多くの人を魅了してやみません。
当会が放つこの夏の紗の新作は、通好みの彩りである茶。作務衣ファンなら、ぜひ一着は揃えておきたくなるお洒落度の高さがたまりません。
炎天下、この作務衣をまとって涼しげに歩けば、人々の羨望の視線が集まること間違いなし。
暑さにかまけて、つい衣服も横着になる他の人を尻目に、紗の作務衣でたっぷりと、“お洒落の美学”をご堪能ください。

紗つむぎ作務衣(しゃつむぎさむえ)

ほどよい透かしと、シャリ感のある肌ざわりは、まさに盛夏の一着。
この「紗つむぎ作務衣」は道楽価格ではなく、誰でも手軽に求められる価格とするため、素材は絹にかわり、その光沢が最も絹に近いとされるポリエステルを使用。
それに、紬の特徴を再現するために、太さが一定せずに太細の変化がある糸を使った昔ながらの織り…と徹底して紗紬の風合いを求めています。
そして、名門桐生が本腰を入れただけに仕立て上がった「紗つむぎ作務衣」の出来栄えはびっくりするほど。素材をあかさなければ、昔ながらの紗つむぎだと言う人もいるほどです。
写真のように、いかにも涼しげな透明感。そして、太さが不均一な糸と強い撚りから生じるシャリ感の心地よさは抜群。汗をかいてもサラッとして肌にべとつかない風合いが得られます。
夏の陽射しの中でひときわ映えた、おじいちゃんの紗紬。その風合いが見事に再現されたというわけです。

紗つむぎ作務衣開発秘話(2)

不均一な糸づくりから、織りまで、昔ながらに…
どんな着物だったのだろう?研究心と好奇心が半分ずつ。
あれこれ調べてみた結果、答えをくれたのは、絹織物の産地として有名な桐生(きりゅう)からでした。
紗のような透明感とシャリ感、それに相当な着道楽だったことを考えると、多分それは「紗紬(しゃつむぎ)」であろうとのこと。
この紗紬は、紗という名がついていますが、紗の組織ではなく、極細の駒糸(各々の撚り加減が違う強撚糸)で平織りした織物。
紬(繭を手つむぎした太さが不均一な生糸)が生み出す独特のシャリ感と透明感を持ち、昔から盛夏向きの織物として愛用されていました。
当時でも高級品、現在ではちょっと手が出ないほどの値がつくといいます。
しかし、時の運というのはあるものです。
と申しますのは、ちょうど桐生でもこの紗紬の良さをもっと多くの人にしってもらいたい――と考えていた矢先だと言います。
話はトントン拍子に進み、即、夏の作務衣への導入が決定となりました。

紗つむぎ作務衣開発秘話(1)

一枚のお便りから生まれた新作。
「五十の声を聞こうかという頃になって、やっと和装の良さが分かりかけてきました」
こんな会員の方からのお便りが目にとまりました。要約すると、次のような内容でした。
「作務衣や和服に興味がわき出した途端、何かにつけて子供の頃のある情景が頭に浮かんでくるのです。
それは、カンカン照りの夏の昼下がり、私の手を引いて歩くおじいちゃんの着物すがたなのです。他の部分はボヤけているのに、おじいちゃんの姿だけがくっきり…幼心にも、それは鮮烈に映ったのでしょう。
今思うと、その着物は紗のように透けていて、触るとザラッとした感じがあったように覚えています。着道楽だったおじいちゃんには叶わないでしょうが、あの着物すがたに一歩でも近づきたいと思っています…」
そして最後に「私の昔話が作務衣づくりのお役に立てれば幸いです」と結んでありました。

銀紗作務衣(ぎんしゃさむえ)

古来から愛されてきた、透かしの美学。
絽や紗の“布地を透かす”という発想や技術は、二千年も昔に中国で生まれたといわれています。
細やかな美的感覚を持つ日本人にとって、この透かしの美学はとても好ましいものだったようで、絽や紗は古くより夏のお洒落には欠かせないものだったようです。
夏のお洒落の格上定番とされてきた紗。圧倒的な透明感を感じる銀紗作務衣には、静電気防止の加工も施されています。

綿絽作務衣 藍鼠(めんりょさむえ あいねず)

季節の光や風を採り込む。
見ているだけでも涼しげな色合いだと思いませんか。その上に五本絽の透間が光を通すのですから、気分は爽快の一言です。
綿素材の五本絽――当会の綿絽作務衣は、ひと季節早めに、春の終わり頃から着用を始められることをおすすめいたします。もちろん、盛夏まで絽の醍醐味を楽しむことができます。
絽や紗は、黒や紺など濃い色の方が透明感が強くて良い――という声もあるようですが、それは色が少なかった頃からの言い伝え。淡い色が見せる透明感はとても自然で柔らかく、心が和むものです。季節の光や風を採り込む一着、いかがでしょう。

緑紗作務衣(りょくしゃさむえ)

光を透かし、夏の主役をさらう。
麻がその感触で涼しさを感じるなら、視覚…つまり目で感じる涼しさもあります。その代表とも言うべきなのが、“絽”と“紗”と呼ばれる織物です。
当会もこれに挑戦。
まず、絽の作務衣「潮騒」を開発して世間をあっと言わせました。
そして春、そこまでは行くまい――という声に逆らうように「紗の作務衣」を発表しました。これが大評判。
藍紗の端正さに比べて、緑紗は“粋”な感じです。