サマーウール作務衣 那智(さまーうーるさむえ なち)

私ども「伝統芸術を着る会」では、年4回発行している「作務衣かたろぐ」の巻頭には新作の作務衣をご紹介することを“決めごと”としています。そのために成した努力や工夫が、わずか10年で作務衣のアイテム数70以上を実現し、専門館としての信頼を勝ち得たのだと自負しています。こんな誇りや実績、決めごとを、「良いものは良い」と軽く一蹴してしまったのが、「サマーウール作務衣」だったのです。
実は一昨年の夏、巻頭特集としてサマーウールを採り上げた時も、サラサラしすぎるのではないか…とか色が淡すぎるのでは…と意見がまとまらず、ならば、ここは会員の皆様に判断して頂こうとグリーン系の「尾瀬」を発表。
ところが、そんな心配をよそに、夏物としては異例の大ヒット。そして昨年の会議では前年に輪をかけた意見が続出。そんな中、ブルー系の「奥入瀬」を発表。結果は、なんと一年目をはるかに上回るご用命を頂き、これにはスタッフ一同驚かされました。
会員の皆様からの声を集約してみますと、どうやら「夏の作務衣」としての魅力がこの一着には多面的に散りばめられていることが人気の秘密となっているようです。
ここまで愛され望まれる作務衣なら異論はなし、ということで今年の夏号の巻頭特集は、三度サマーウール作務衣で参ります。
色は、柔らかさを強調したベージュ。名前は、「尾瀬」「奥入瀬」と続いた冷涼のイメージを受けて、熊野の名滝「那智」を頂きました。

サマーウール作務衣 奥入瀬(さまーうーるさむえ おいらせ)

旅行や帰省のお供に、“心の書斎”が広がった!
「サマーウール作務衣」につけた高機能性は、品質だけにとどまらず、作務衣自体の幅を広げるという嬉しい波及効果も生み出しました。
小さく折りたためる上にシワになりませんので、持ち運びに便利。旅先や帰省先でも“作務衣のある暮らし”が満喫できます。“心の書斎”の空間がグンと広がったということです。
また、洗濯もご自宅ででき、アイロンがけも簡単。
作務衣ならではの形を損なわずに、新しい時代感覚を取り入れた画期的な作務衣の誕生。
これは、古き佳き伝統を守った作務衣を作り続けてきた当会だからこそ、成し得た開発なのです。

サラサラとして柔らかい…サマーウール(2)

素材は「サマーウール」。
ウールのイメージから暑いのでは?とお考えかもしれませんが、このサラサラとした柔らかい感触は得もいわれぬほど。綿や麻とは一味違った新感覚の夏の素材、私どもはぞっこんです。
この素材「サマーウール」にさまざまな加工を施しました。
まず、防縮性や防シワ性を高める樹脂加工。この加工によって、小さく折りたたんでも座ってもシワになりません。
さらに、強撚糸のクレープ糸を使用することにより、ケバ立を抑え、ほこりがつきにくくなっています。
加えて、写真のように水をはじく強力な撥水加工を施しています。雨はもちろん、コーヒーや食事中の不始末も心配なし。シミや汚れも防いでくれるというわけです。
薄くて軽い上に通気性に富むサマーウール素材で織り上げたこの作務衣は、紗や絽ほどではありませんが、程よい透明感を持ち、サラサラとしたソフトな肌ざわりと相まって、いかにも涼しげ。しかも、前述のような加工によって、まさに“夏の作務衣”として最適。
現在、繊維業界が競い合って開発を続けている“高機能”商品として見ても、この作務衣の品質は高いレベルにあると、当会は自負しています。

サラサラとして柔らかい…サマーウール(1)

肌触りのよさに加えて、シワにならない、ほこりがつかない、水をはじくという加工を施した高機能。
あのごわごわ感がいい。自然についたシワがたまらない味だ。少々汚れても気にしない、その方がらしいや…。
こんな声が圧倒的。つまり、作務衣の良さはあくまでも素朴で野趣にあふれたものでした。
もちろん、このイメージはこれから先も変わることはないでしょう。
しかし一方では、作務衣の普及につれ、新しい作務衣へのイメージや期待が芽生えていました。
これは必然。作務衣が広く暮らしの中に定着し、さらなる多様性を求められている証拠。むしろ喜ばしい現象というべきでしょう。
作務衣“新時代”に対応した画期的な一着を!
ごわごわもいいけど柔らかな肌触りもたのしみたい。
明るい色を着たいけど汚れが目立っては…。
自然なシワならともかく、座った後にできるいわゆる“生活ジワ”が、なんとかならないものか…。
というようなご意見やご要望が実際に数多く寄せられると、なるほど作務衣も“新時代”に入ったかな――と実感せざるを得ません。
そこで「伝統芸術を着る会」は、さまざまなご要望を集約した形で、新しい作務衣をご呈示させていただきます。
伝統の形にさまざまな加工技法を施した高機能性から生まれる新感覚の作務衣をご覧下さい。

ジュンロン作務衣

< 話題の「テンセル」と兄弟分の「ジュンロン」
昨今の洋装業界でスポットを浴びた素材に「テンセル」という繊維があります。
スーツやポロシャツ、セーターなどに盛んに採用されたのでご存知の方も多いかと思われますが、この「テンセル」もレーヨン。つまり、「ジュンロン」とは兄弟のようなもの。
光は無色透明ですが、それが当たるものによって千変万化します。
写真に、それぞれ微妙な色の違いのあることにお気づきかもしれません。それこそ、作務衣が生きている証。
特に絹に似た光沢を持ち、“光線”という語源を持つレーヨン繊維ですから、戸外、室内、撮影のためのライティングによって色合いが変わります。
逆に言えば、実際に着用した場合もそのように見えているということなのです。このことは他の作務衣、特に絹素材のものにも共通して言えることです。
自然の恵みから生まれた植物繊維
素材:植物繊維レーヨン・ジュンロン100%
染め:ジュンロンの高い染色性(染色堅牢度5級)を活かし、強弱をつけながら長い時間をかけ、ゆっくりと押し込むように染め上げてゆく。
柄:上記の染色工程により、日本古来の手染めのようなムラ染が可能となり、手もみ風のシボが生まれる。
特色:絹状の手触りと光沢・水にぬれても強度は変わらず、縮みが少ない(縮率3%以内)・引張強度、引烈強度などの物性に優れていて、頑丈。

光に映える、柔らかなシボ模様――ジュンロンという素材

112年前にフランスで生まれたレーヨン繊維
拙文をもって商品のご紹介をさせて頂いております筆者は、戦中に生まれ物のない時代に生きてきたせいか、これまで「レーヨン」という繊維に対して大きな認識の誤りをしていました。
石油か何かでできたもの…という様な偏見を持っていました。
まさに、穴があったら入りたいような心境ですが、同世代以上の方の中には、筆者と同じような誤解をお持ちになっていた方もおられるのではないかと思い、こちらから先に恥をさらしてしまいました。
調べてみますと、このレーヨンなる繊維はなかなかのもので、1901年のビクトリア女王の葬儀にこの生地で仕立てられた服が着用された程の格式を持っているのです。
原料はパルプなどの天然繊維素高分子
「レーヨン(Rayon)」は、1884年(明治17年)、フランスのシャルトンネ伯爵によって初めて工業的な製造方法が発明されました。さらに、1901年英国のクロス、ベバン、ビートルの3人によりビスコース法によって作られるレーヨンが発見されたというのですから、その歴史は日本の時代(明治)に合わせて考えるとすごいものがあります。日本では、1924年頃から生産が始まっています。
原料は、木材パルプやコットン・リンターパルプなどの天然に存在する繊維素高分子。これらを溶解しビスコースを作り、ノズルから押し出して繊維状に凝固再生させた繊維がレーヨンです。
用途としては、優れたファッション性と強い物性を利用して、ドレス、スーツ、シャツ、ジャケットなどに採用されています。
このレーヨンの長所を伸ばし、短所を改良して生まれたのが、新作の素材として採用されたジュンロンというわけです。

カタカナの作務衣があるわけ

当会の作務衣には、いわゆる横文字といわれるカタカナ表記を持つものも多くあります。
デニム、夏のサマーウール、秋のコーデュロイ、何やら洋装ファッション誌の趣き。
ところが、これらのすべてがヒットの連発なのです。
私どもとしては、無理やりにこの横文字素材を集めたわけではありません。
数多くの試作生地の中から、季節にふさわしい、作務衣にふさわしいと判断したものが、たまたま横文字素材だったのです。
それはまさに、現在の洋装ファッションの流行とピタリと一致しています。
このことは、今や作務衣は定着どころか、洋服やカジュアルウェアなどと同じポジションのように、広くその良さが受け入れられているという以外に考えられないのです。
重ねて申し上げますが、私どもは、この素材でこの色を――と決めて職人さんにお願いするケース以外は、まず試作生地を素材名など知らされずに、目と手で審査いたします。
そして、どれが最も新作作務衣のテーマにふさわしいのかと、意見をまとめて生地が決まります。
当会以外では考えも及ばないような独創的な作務衣は、古きを再現し、新しきを探る――という当会の理念でもあるのです。

麻混涼風作務衣 風流(あさこんりょうふうさむえ ふうりゅう)

初夏のお洒落の真打ち、個性派の麻!
誰もがお洒落の手を抜きがちになる暑い季節に向かうときこそ、お洒落を豊かに楽しむのが粋というもの。
ならば麻で、それも人気の麻混で個性的な一着を創ってみよう…その想いから生まれたのが、麻混涼風作務衣です。
この奥深い彩りは、二色の糸を用いた効果によるもので、基本の色糸は紺染め。その紺色に、紫染めの色を絡め合わせ、段柄模様の印象的な意匠にて織り上げました。
もちろん、優れた通気性や吸汗性など、麻が持つ自然の機能性も備え、加えて、綿の優しさも兼ね備えています。
暑いからこそ、お洒落の手を抜かない…その心意気にご賛同いただける方にこそ着ていただきたい自信作です。

麻混作務衣 ブラック(あさこんさむえ ぶらっく)

麻は着たいが、シワになりやすいなど気を使いそう…という理由で麻を未体験の方々へお薦めしたいのが麻混作務衣です。
麻と綿の混紡ですから、本麻ほどシワになりません。それでいて麻の魅力であるあのシャリ感や爽快な着心地が味わえますので、これからの季節にもってこいの一着です。

本麻作務衣 松葉(ほんあささむえ まつば)

夏は旬の素材である麻。それも本麻のざっくりとしたあの質感、着心地がたまらない。
そんな方々に高く支持されている「本麻作務衣」。爽やかな緑を彩りに、満を持して自信の作品をお届けすることができました。
もちろん、本麻独特のシャリ感と涼感、着心地は、ファンのお望み通りです。