年末、元旦、初詣・・・などのお正月
一年、三百六十五日が過ぎると気分も新たに年が始まります。いつ、誰が考え出したのか知りませんが、こんな時間の区切りというのはとてもいいものです。人生が、いや歴史がただ何百何十万何日・・・と区切りなしに続くとしたら、味も素っ気もないものになることでしょう。年号があったり、百年を世紀で表したり、一年は十二ヶ月、ひと月は三十日という具合に切りがあることは、日々にメリハリを付け四季の移ろいも合わせて、私たちの暮らしをみずみずしいものにしてくれる、とても人間的なシステムだと思います。
伝承の儀式や様式―お正月は檜舞台です。
その最も象徴的なのが“正月”です。十二月は三十一日の深夜まで取り立てに走りまわる借金取りも、除夜の鐘と同時に“おめでとう”―これは別に落語の世界だけの話ではありません。新しい年のめでたさや晴れがましさの前では、旧年のイヤなことやつらいことも姿を消してしまうということです。
というわけで、今年も残りわずか。何かと大変だった平成五年も、一夜明ければ希望に満ちた新しい年のスタート。何代にもわたり伝承されてきた儀式や様式の舞台が、松が取れる頃まで華やかに厳かに展開します。家族全員が、あたかも時代劇やドラマの主人公みたいに気取っていたり、お父さんがお父さんらしかったり・・・多少のテレくささはあっても、それでいいのです。それが、まさにお正月なのですから。
行く年来る年―
伝統芸術を着る会のカタログ「作務衣かたろぐ」が、こんな形で内容を深くできるのも、会員の皆さまの意識の高さ、ホンモノを見極める確かな目に支えられていることに尽きます。その意味も込めて、日ごろの皆さまのご支援とお引き立てに深く感謝いたします。同時に、皆さまにとって、来るべき新しい年が佳い年でありますよう、末筆ながら心よりお祈りいたします。
正絹紬織作務衣 藍
着物セットの生地で創った高級感あふれる作務衣です。
前回ご紹介いたしました着物セットは、これた大好評。そんな中、古参会員の方々から、「この着物の生地で作務衣を創ってほしい。それもできれば、年末・年始に着てみたい」という突然のリクエストがあり、私どもは大わらわ。
いつも貴重なご意見をいただいている方々からの声なのですから、応えないワケには参りません。時間との闘いでしたが、職人を動員し、やっと今回のかたろぐに間に合いました。
しかしさすがは古参の会員の方々。いざ創り上げてみると、えもいわれぬ気品と格調をたたえた、実に見事な一着が生まれ、私どもと致しましても自画自賛したくなるような正絹の新作になったのです。総裏付きで暖かさもしっかりと確保いたしました。
正絹着物セット 銀鼠
会合や訪問には、そろそろ着物を・・・という方に最適です。
年末・年始になると、街を往く人々の着物姿が気になりはじめる。これも和の落ち着きや趣きに引かれ始めている証拠かな・・・そんな心持ちになったら、貴方もそろそろ、着物の似合う、渋さと年輪を併せ持った、粋な男の年齢。
和の装いの魅力の深みと素晴らしさを普及して参りました伝統芸術を着る会と致しましては、いつでもドンと構えていてほしい大黒柱だからこそ、いい着物を最初から着ていただきたいと思うのです。
それもお得に揃えていただけたら、もっと和の愛好家や作務衣同好の士もぐんと増えるに違いない・・・そんな思いをもとに生まれたのが、ご覧の「着物セット」です。
圧縮ウールコート
軽い・優しい・暖かい・・・作務衣専用の新コートです。
この季節になると街なかでよく見かけるのですが、見た目にも重たげなコートを羽織って、首をすくめながら歩いている方がいらっしゃいます。確かに厚手のコートは防寒・保温という点においてはその機能を果たしているかもしれません。しかし、ご本人も重々分かっておられると思うのですが、いかんせん重い。肩が凝る。そのせいでしょうか。歩き方も何となく元気がないように感じられます。
もしや、作務衣をご愛用いただいている方々の中にも、作務衣の上から、そんな重いコートを羽織っていらっしゃるのでは・・・和の装いに「粋」というセンスを求める私どもと致しましては、これは見過ごしてはいられない。
そこで今回新たに開発に漕ぎ着けましたのが、作務衣専用の「圧縮ウールコート」です。一度袖をお通しいただくと即座にご理解いただけるのですが、その軽さ、しなやかさは、一般のコートの概念を軽やかに吹き飛ばしてしまうほどです。
その魅力を実現したのは、暖かな天然ウールに圧縮をかけて密度を高めるという手法。さらに総裏を施してありますから、その暖かさは、薄くて軽やかな着心地からは想像もつかないほど。
カシミアインバネス 高貴(ロイヤル)(2)
贅沢な風合い。異彩を放つダンディズム!
その人気を誇るインバネスに新作の登場です。名称は「カシミアインバネス高貴(ロイヤル)」文字通り、カシミア仕立てのインバネスです。インドの高冷な地、カシミール地方に生息するカシミア山羊の毛を綾織りにしたカシミア。天然繊維の王と呼ばれるこのカシミアでインバネスを仕上げようというのですから、当方も少なからずの緊張を強いられました。
しかし、一度インバネスを再現した経験は貴重で、「浪漫」のようなみごとな出来映えを得ることができました。撮影のとき、モデルさんの思いつきで被ったベレー帽もジャストフィット。非日常的でドラマ性の強い外套がますます異彩を放っています。
快い暖かさはお墨付き、軽さ、肌触りも抜群!
肌触りがよく、シルクのような光沢が得られ、柔らかく軽い―と定評のある高級素材“カシミア”による仕立てですから、快い暖かさはお墨付き。そして、この贅沢感は他に例えようがないほどです。
カシミアインバネス 高貴(ロイヤル)(1)
天然繊維の王と言われる“カシミア”でインバネスを仕上げました。
あれからほぼ一年、早くも“今年も作るのか?”とか、“予約したいのだが・・・”といったお問い合わせが相次いでいます。あまりのご好評に、このインバネスについては、昨年より着々と準備をすすめてまいりました。
大好評!即完売!
昨年の冬号で発表したインバネスが大変な評判。あっという間に100着が完売。それは、まさにセンセーショナルな出来事でした。そして今年も・・・
まず、昨年の正藍染インバネス「浪漫」の量産態勢づくり。さらに、要望の多いインバネスの高級化がスタッフに課された宿題でした。そして、「カシミアインバネス高貴(ロイヤル)」が誕生しました。つづく・・・
紳士カシミア和装コート
作務衣に羽織るも良し
寒い季節のお出かけに、ただゴテゴテと着ぶくれするのはヤボというもの。こんな時こそ、男のダンディズムだ。コート、ブルゾン、マフラーと“粋”を演出するものには困らない。おっと、インバネスも・・・。
この愉快さを一度味わってしまったら冬が待ち遠しく、北風が友人となってくる―
正絹袴アンサンブル 黒
新様式も今や定着、個性あふれる姿に喝采が集まる。
私どもの作品の中には、皆様からヒントをいただいたり、意見をいただいた中で産声を挙げた作品が少なくありません。ここでご紹介する袴アンサンブルも、十数年前にある会員の方の声をもとに生まれたもの。
お客様の声から生まれた「新様式」
「作務衣に袴を合わせてみてはどうだろう」。最初その話をお聞きしたとき、創作のヒントを常に探し求めていた私どもはドキッとしたことを覚えています。作務衣に袴・・・そんな発想はスタッフの誰ひとりとして思い浮かばなかったという悔しさはもとより、その斬新なアイディアにカルチャーショックを受けたからです。
そして開発が進み、完成した袴アンサンブルの姿を見たとき、スタッフのひとりが思わずつぶやきました。「この野趣あふれる姿、まるで日々新しい秩序が生まれた戦国の世における武将の平服のようだ・・・」と。それがまさに新しい「新様式」の始まりだったのです。あれから時が経過し、新様式も今ではすっかり定着し、当会の看板作品のひとつにまでなりました。この季節に何かと増えるフォーマルな場などにおいても礼を失わず、それでいて着る方の個性を大いに発揮させてくれる袴アンサンブル。ぜひ一着はお手元にどうぞ。
サミア インバネス(ブラウン)
冬の主役、外套。寒に舞う・・・浪漫を秘めて。
昔懐かしい、だがどこか新しい香りに満ちて・・・。あえて“外套”と呼びたいその深い魅力。人が知らない、着ないからこそ、まとう慶びもひとしおです。
懐かしさと新しさが同居する妙。
想像してみてください。寒風の中、颯爽と背を伸ばし、外套の裾を優雅にひるがえしながら歩き行く人の姿を・・・。他では決して見られない、実現することのできないそんな風雅をお贈りできるのも、古き佳き文化と装いの復刻・普及に相勤める当会ならでは。
まずご紹介いたしますは、スコットランドに生まれ、大正の時代に愛された<インバネス>。様式通りに復刻し、ご紹介するごとに大評判を呼ぶ作品です。今回の新作は、超極細繊維(毛髪の約20分の1)という新素材を用い、ソフトな肌触りと、実に軽やかな着心地を実現したもの。外套といえば何だか肩が凝りそうで・・・という方にもぜひお薦めしたい、抜群の暖かさと素晴らしい見映え、まとっているのを忘れそうな軽やかな着心地を実現しています。
彩りは、お洒落の上級者が好むというキャメルを採用。どんな色の作務衣や服でも相性が良く、しかもたまらないほど格好が良い。この冬はインバネスが面白い。個性派の貴方へ贈ります。ものです。
正絹作務衣 黒
常識を破った正絹シリーズもバリエーション豊かに。
作務衣といえば、古くから僧侶の作業着として継承され続けた古き佳き和の装い。その素材は綿というのが基本なのは皆様もご存じの通りです。確かに綿素材の一着は洗うごとに愛着が増し、基本の素材としてこれからも不動の地位を保ち続けることは私どもと致しましても何の異存もございません。
しかしながら、その基本を守りながらも、日々変化する時代やライフスタイルに連れて、作務衣も進化しなければならないということが私どものテーマのひとつであることも揺るぎない事実。そのためこれまで、実に様々な素材に挑戦し、新たな領域を開拓して参りました。
「正絹作務衣=伝統芸術を着る会」
そして、その記念すべき先鞭つけたのが、ご覧の正絹作務衣シリーズです。かたや質実剛健な和の装い、かたや惨然と輝ける生地の王者。その二つがあいまみえるなど如何なものか。いや、これこそ革新、あっぱれだと、いやはや発表当時は嵐のような賛否両論を巻き起こしたものです。しかしその熱い鉄の固まりのようだった革新も、時が経過してしっかりとカタチと地位を獲得し、いまでは私どもの代表作と相成りました。
お客様の中には、一般に発表されている他の正絹作務衣の追随を許さない品質と品揃えから、「正絹作務衣=伝統芸術を着る会」と認識されている方もいらっしゃるほどです。バリエーションも人気の彩を冠した黒、そして個性派の銀鼠も加わり実に多彩。なめらかに輝く光沢を楽しみながら、年末年始のお出かけや語訪問などのための晴れの場での一着として、ぜひお揃えを。