繊細にして高感度な春の作務衣が誕生!
この生成りの反物に色を染めます。織りの表情と三素材の色付き具合の個性を出すため、敢えて後染めの手法をとりました。
色は三彩。植物染料<茜(あかね)>を使った赤系。茜に藍玉を混ぜた紫系、そして植物染料<刈安(かりやす)>による黄系の三色です。
いずれも、これぞ春!という感じの三彩。そのいずれにも、正藍の春雨が音もなく降り注いでいるのです。
三素材を織り込む大胆さ。さらに雨がすりの配置、加えて万葉染めによる春三彩の表現――こんなに繊細で味わい深い作務衣は後にも先にも類を見ません。まさに、官能をくすぐる高感度な作務衣と申し上げても過言ではないでしょう。
それもこれも、織りの石塚、染めの秋元という二人の職人の技術とセンスなくしては成し得なかった仕事なのです。
洗い刺子作務衣 藍矢倉(あらいさしこさむえ あいやぐら)
きっかけは、いなせな火消し半纏だった。火、風、汗、灰…あらゆる力が響く修羅場で、火消し半纏はそれらに負けずに粋に舞う。その力を作務衣に託した新作の特徴は…。
厚手の生地で丈夫で長持ち、着るほどに愛着が湧き上ります。
徹底的な洗いをかけてありますから、ご自宅で洗濯しても縮みません。
洗い作業により生地がこなれていますから、着心地も動きやすさも上々。
作務衣に仕立ててから洗うため、衿元の藍の濃淡など、かすれ具合が実にいい味わいを醸しだしています。
綿刺子に洗いをかけた生地の特性により、真夏以外なら、どのシーズンでも袖を通してお楽しみいただけます。
洗い刺子作務衣 藍矢倉(あらいさしこさむえ あいやぐら)
渋い男の主張、これぞ作務衣!刺子織に正藍染、火消しの粋の妙。
“火事と喧嘩は江戸の華”と云われたように、火事場に雄雄しく舞う火消し半纏の姿は大勢の人を魅了しました。
その、火にも水にも耐え、役目をまっとうするあの力と粋を作務衣に活かしたい…。その想いから生まれたのが、<洗い刺子織作務衣 藍矢倉>です。
綿100%の無垢な素材を、あの武州正藍染で染め上げた味わい深い彩り。そして、素朴な中にも適度な装飾性を生み出す刺子織による、頼りがいのある厚手の丈夫な生地…。
試作品は、「これぞ作務衣!」と叫びたくなるような、古き佳き和の装いの原点を極めたものになりました。
しかし、何かが足りない。あの火消し半纏の粋を感じさせる何かが…。しばし試作品を眺めていたスタッフが、こう呟きました。
「徹底的に洗いをかけてみよう…」と。
そうです、足りなかったのは、数々の修羅場をくぐり抜けた火消し半纏が、その生地の表情に刻み込み、渋く漂わせていた老練の味わいだったのです。
若さだけで輝いていた青年が、人生の修羅場をいくつも越え、いつしかその顔に男の主張を漂わせるような、えもいわれぬ深さを新作にも宿したい…。
そこから作務衣に仕立ててから洗う製品洗いの作業が始まりました。それは、これぞ!と思えるような程よい色落ちを見極める神経を遣う作業…。
そして全体的に8センチ縮んだ段階で洗いは終了しました。
この作業段階を加えたことにより、生地がほどよくこなれ、最初から柔らかな着心地も愉しめるという効果も得られ、その好結果には云うことなし。
この冬は、火消しの華で、いなせに街を闊歩してみてはいかがですか。
正藍染手刺子作務衣 箱重(しょうあいぞめてざしこさむえ はこがさね)
素朴さを極めると圧倒的な存在感が生まれた
素朴な錦に施された、凛々しい正藍染。
その海に浮かぶ、「亀甲柄」「箱重ね」の手刺子模様が無言の主張を放つ傑作品です。
肩にかかる「箱重ね」、袖部分の「亀甲柄」、個性派の手刺子は、背中への視線にもしかと応えます。
本藍染 ループ絣作務衣 遠州と羽織(ほんあいぞめ るーぷかすりさむえ えんしゅうとはおり)
若い感性が生み出した「ループ絣」の魅力を存分に
寒い時期こそ最も染めがうまくゆくとの七代目の経験を受け継ぎ、新作は秋から冬にかけて糸を染めたもので、本藍染の出来栄えはまさに完璧。
その糸を“七代目を追い越すための独自の工夫”として八代目が創案した「ループ絣」により織り上げた生地は実に見事な印象を与えてくれます。
タテ糸は、太目の20番手の2本の糸を撚り合せた双糸を、糸に適度なムラを出す“糸くくり”と呼ばれる染め手法で仕上げた絣糸を使用(ちなみにYシャツに使われているのは30番手。20番手がいかに太いかお分かりいただけると思います)。
そしてヨコ糸は、これも太目の10番手ムラ糸を配し、このタテ・ヨコ双方の太い糸で、よりざっくりとした質感を持たせるために、生地に凹凸の変化ある表情ができる綾織りに仕立てました。
さらにそこに2,5番手という特太の糸に撚りを掛けた特殊な“ループ糸”で“手刺子”の風合いを醸し出すという凝りようは、八代目の感性ならでは。
ソフトで、しかも今人気の手刺子風のざっくりとした感触の仕上がりの素晴らしさは、写真でもご納得いただけるはず。
「まだまだひよっこだと思っていたが、うん、なかなかやるもんだ…」
テレ気味につぶやきながらも、一瞬真剣な光が走った七代目の眼が、新作の価値を十分に語っておりました。
本藍染 ループ絣作務衣 遠州と羽織(ほんあいぞめ るーぷかすりさむえ えんしゅうとはおり)
JR浜松駅から車で揺られること30分あまり。当会が作務衣創りを委ねる優れた染織の里のひとつ、“遠州”「西ケ崎」の地が見えてくる。かの地で染織りの老舗として代を重ねる辻村染織の七代目当主。四十余年の経験と柔軟な感覚で次々と銘作の誉れも高い作務衣を世に送り出し続ける職人、辻村辰利氏は云う。
「藍は生き物。寒く空気が乾燥した時期こそ、最も染付けがうまく仕上がる」
その経験から編み出された知恵は、ご子息でもある八代目、辻村啓介氏へしっかりと受け継がれ、そして今、その若い感性のすべてを込めた新たな藍染の傑作が目の前に…。
独自の藍染の境地を拓くべき研鑽の集大成
七代目のもとで長年の間、藍染修行を存分に積んだ八代目。七代目に言わせると“超ガンコ者でこだわりを持つ性格”だとか。
「いまはまだ藍染ではオヤジにかなわないけど、いつかは自分なりの新しいモノをと思って、ひとりでいろいろ研究してます」
謙虚ながらも満々たる自信が伺えるその言葉の通り、独自の工夫を凝らした気銘の新作を創り上げてくれました。
正絹 綿入れはんてん(しょうけん わたいれはんてん)
暖かさもさることながら、正絹をさらりと普段に着る。この満足感がなんとも言えない。
ちょっと小寒い時、もうひとつぬくもりが欲しい時にひょいとはおれる気軽さ。どんな服装にも合わせられる上に、そのまま外出もOKという便利もの。
これまで、刺子や綿素材の綿入れはんてんをご紹介して参りましたが、遂にと言うべきか、やはりと申し上げるべきか“絹”のご要望が…。
つまり、はんてんにも目的別、お好み別の作品が必要になったということなのです。
素材は絹100%。綿入れのキルティング加工付きです。
本藍染刺子織はんてん(ほんあいぞめさしこおりはんてん)
飾りを廃した刺し模様、ポケット部分にのみアクセントをつけました。
伝統の作務衣に刺子織を採り入れた七代目辻村辰利さんが、自ら作品づくりを申し出た注目の一着です。
「庶民が古くから着用した“はんてん”こそ、刺子が最も似合うもの」というのが七代目の主張。全体に飾りを廃した刺子模様、そして両ポケット部分だけに柄が入っています。このアクセント付けが何とも絶妙。すっきりした爽やかさと本藍染の深い色合いが現代感覚にピッタリ。
着用してみると、その着ごこちの楽さと軽さに驚かれることでしょう。カジュアルな装いにもよく似合います。
本藍染 綿入れはんてん・ロング綿入れはんてん(ほんあいぞめ わたいれはんてん・ろんぐわたいれはんてん)
本藍染をぬくぬくと着る…この幸せ感、冬もまた楽し。
綿入れはんてんのサイドポケットは、さりげない色違いの意匠がまた粋なもの。
ロング綿入れはんてんは、腰までゆったりすっぽり包み込む、着丈95センチのゆったりサイズ。袖と衿の格子が個性的。
着るほどに深まる藍染のぬくぬく感。男女兼用です。
本藍染 綿入れ作務衣と羽織(ほんあいぞめ わたいれさむえとはおり)
四季にはそれぞれの味わいがある。
寒さ、冷たさもまた冬のだいご味。
暖かい部屋もいいけど、ぬくもりから一歩踏み出して冷気の中に身を置いてみるのも悪くはない。一瞬、シャキッとなり冴え冴えとした風情が五体を包み込む。
思い切り障子を開けて縁側で渋茶をすするもよし、一献かたむけるもよし。下駄を突っかけて北風の中を歩くもさらによし。
こんな時、作務衣がよく似合う。新しく冬用に工夫された本藍染作務衣で過ごす冬のひと時。男のダンディズム――ここに極まる。
本藍染めの格調を失うことなく軽量綿をキルティング加工。暖かくて動きやすいと大評判。
作務衣にとって、冬はちょっぴり苦手な季節。厳しい僧侶の修行ならいざ知らず、一般の人にとって従来の作務衣では冬の寒さ、冷たさがいかにもつらいもの。
でも、作務衣の背景としてこの季節の情緒や景色は、いかにもふさわしく捨てがたいものがあります。
それでは…と、作務衣の下にセーターやももひきなどモコモコ着込んでは、折角の雰囲気も台無しです。
“渋さ”と“暖かさ”を合わせ持った冬用本格作務衣。
そこで、形も染めも伝統的な味わいを損なうことなく、この季節でも着られる作務衣として開発したのが、「本藍染綿入れ作務衣」です。
ただ暖かくするだけなら簡単です。そうではなくて、本格的な作務衣としての形式や様式を備えるとなると、これはひと苦労。
伝統性と合理性を合体させるため、改良に改良を重ねた末に仕上げたものだけに、その完成度の高さは、作務衣愛好家の厳しい目をも納得させるものになったと自負しております。
昔ながらの“綿入れ”のような重くてぼてぼて感はなし!
表地は、木綿100%。染めはもちろん本藍染という本格派です。そして、同じく木綿100%の裏地の中に軽量のポリエステル綿をはさみ込んでキルティング加工が施されています。つまり、昔でいうところの“綿入れ”という雰囲気。
ですが、着てみるとわかりますが、昔ながらの綿入れのような、重くてごわごわした感じはまったくありません。しかも、外見からはキルティング加工が見えませんので、作務衣ならではの渋さを損なうことはありません。
この冬専用の作務衣なら、庭仕事や散策、ちょっとした外出にも寒さを恐れず着用できます。
この冬、外見を“渋さ”で内側を“暖かさ”で装った粋なあなたが目に浮かぶようです。本格的な寒さを目前にして、ぜひお試しください。
綿入れ羽織着用でさらに暖かく…
この<綿入れ作務衣>にも専用の羽織をご用意しております。冬用の作務衣は他のものにくらべ少しふっくらとしていますので、羽織を重ねることによりスッキリした雰囲気をつくることができます。
この羽織、染めも素材も作務衣とまったく同じ。さらに、裏地の中には同様にキルティング加工が施されていますので、暖かさも倍増します。
この羽織、<綿入れ作務衣>とセットでお求めになるのが理想ですが、手持ちの作務衣に合わせてお使いになっても構いません。格調を高める一着です。