「心の書斎」だからこそ、戸外でもうんと楽しみたい
「お気に入りの作務衣を、家の中やご近所だけで着て歩くのは何とももったいない」という声をよくお聞きするのですが、まったくお言葉通り。
作務衣を着る本来の目的は、窮屈で何かとしがらみの多い時代から解き放たれ、より活動的な暮らしをうんと楽しむためなのですから。
そのせいでしょうか、近頃、旅行先でも颯爽と作務衣をまとい、行楽を粋に楽しんでいらっしゃる方を目にしますが、旅に対するご意見は他の方々とはちょっと違うようです。
「作務衣を着るとね、団体旅行でお金をかけて、ただがむしゃらに騒ぐ旅には関心はなくなるの。そうだなぁ、“心の旅”とでもいうのかな。清々しい空気や、しっとりとした趣を求める旅に出たくなるんだよね」
なるほど、心の書斎と呼ばれる作務衣なのですから、行楽ひとつにしても清流のような清々しさと、情緒あふれる雰囲気を求めたくなるのですね。
工夫を凝らしたモノならばこそ、旅のお供にお気軽に
確かに作務衣は魅力的。でも、行楽や旅に出るのに、手入れなどに気を遣うようなものでは困るしなぁ…という声もちらほらお聞きしますが、さにあらず。
伝統芸術を着る会が、積極的に開発を続けている現代志向の作務衣には様々なタイプのものが揃っており、シワになりにくい、丸洗いできるなど、機能性の高いものも出ているのです。
もちろん、お洒落度も抜群で、着て歩けば人々の羨望の眼差しを集めることしきり。とくれば、旅のお供にしない手はありません。
情緒あふれる心の旅には、作務衣姿が良く似合う――。お出かけが嬉しい季節、今年はそんな言葉が巷にあふれそうです。
揚柳作務衣(新色)
不均等に作られたシボが、布地と肌との間に透間を作り、汗をかいても生地が肌に貼りつくことなく、肌と布地の間を風が通ります。だからこそ夏にうってつけの素材。いつも爽やかなさらりとした着心地が楽しめるのです。
夏の代表として、古くから名が通っている“楊柳縮緬”。昔は職人の手織・手しぼで作られ、なかなか手がでない高級品のひとつでした。
そんな伝統の製法と、現代の技術が作り上げた高機能性が融合され、すばらしい現代の楊柳縮緬ができあがったのです。
昔から、「和服好きは縮みに行き着く」と言われています。まさにこの楊柳は、通が好む縮緬そのものといえます。
揚柳作務衣(ようりゅうさむえ)
風になびく柳を想わせる彩りとちりめんの“しぼ”模様――
楊柳とは、片強撚の糸を使用して、タテ筋の“しぼ”を生じさせる織物で、いわゆる“ちりめん”のひとつ。楊柳縮緬として古くから名が通っています。
布地を縮ませて出来たこの“しぼ”がもたらす独特の涼感と肌触りの良さは抜群。騒動の原因となった色合いも柳の風になびくさまに似ていることから付けられた楊柳の名にふさわしく緑。
タテ筋のシボが柳の小枝を思わせ、その爽やかさは、何だかワクワクするほど。
夏のど真ん中ともいえるこの時期。残暑も含めてまだまだ暑い季節が続きます。むしろ、夏の行事や歳時はこれからが目白押し。
「楊柳」ならではの清涼感、肌ざわりの良さ、そして趣に富んだ風合いを、存分にお楽しみ下さい。
メッシュ作務衣 紺
いいものは和洋を問わず採り入れるという当会の信条から生まれたメッシュ作務衣は、伝統的な紗や絽を現代的に進化させた「透かしの進化論」ともいうべき作品です。
通気性に優れ、汗やシワ、汚れにも強く、もちろん丸洗いもOKという気遣い無用の扱いやすさで、毎年この時期になると人気がグングンうなぎ昇り。
この紺色は、会員の方々からのご要望が最も多かったものを実現したものです。
メッシュ作務衣 茶
初夏号で発表したとたんに爆発的な人気を博し、おかげさまであっという間に売り切れましたあのメッシュ作務衣。
新色の彩りは、おおらかな大地の色を思わせる、渋さと爽やかさがひとつに同居した茶。これも売り切れご免は必至かな…と当会自信を込めた一品です。
機能性の高さで、外出や旅先で着るスキッとする肌合い、通気性の良さは、一度着たら手放せない快感です。
メッシュ作務衣
用の利点と和の魅力の画期的な出会い
「和洋を問わず、良い物の利点は積極的に採り入れよう」作務衣の専門館と呼ばれる当会は、その研究意欲で実に多彩な作務衣を送り出してきました。
そして今回、私たちが素材の一つとして白羽の矢を立てたのが、高い機能性でスポーツ競技のユニフォームとしても幅広く採用されているメッシュです。
いいことづくめの作務衣で、これからの季節がより充実
完成した新作は、これからの季節に相応しい爽やかな色と風合いを見事に主張しています。さらりとした着心地で汗に強く、シワになりにくく、丸洗いもOKと、まさにいいことづくめ。
汗と汚れを気にせず、着る方の行動範囲を大きく広げます。
夏こそ粋の見せ場。例えば歌舞伎の場でも…。
暑い夏は誰もが着るものに無頓着になる季節。
ということは逆に言えば、夏こそ本物の粋、本当のお洒落を、作務衣で個性的に主張できるということ。
それもそれなりの場へのお出かけとならば、作務衣姿はなおさら引き立ちます。それは例えば夏の歌舞伎見物…。
歌舞伎は「科白劇」と「舞踏劇」の二つに大別され、前者は公家や武士など貴族たちの道義感を表した「時代物」と、市井の庶民の生活をモチーフとした「世話物」のふたつに分けられます。
(幕末頃の「世話物」は「生世話物」というそうです)
また、歌舞伎場には独特の装置と道具があり、「廻り舞台」「花道」「迫り上がり」など劇場建築の一部を成す機構があり、役者の演技と結合して、見事な演劇を創り出す重要な要素になっています。
それと共に忘れてならないのがは、観客も華になるということ。舞台はもちろん、客席が共に昇華して、歌舞伎と言う場は、さらに深い感動を生み出すのです。
それなりの場には、それにふさわしい作務衣を。それが本当の粋なのです。
サマーウール作務衣 涼峰(さまーうーるさむえ すずみね)
さらさらと水が流れゆく。まなざしに、得も云わぬ涼感を残して。
ふとそよいだ風に、サラサラと作務衣が揺れた。身だけではない、心にまで涼感を漂わせて。
瞬間、水に棲む魚が、閃きを上げて跳ねた。されど、かかる水しぶきも気にならぬ。逆に心地良いほどに感じるのは、まとった作務衣の技のせいか…。
光、水、装いが昇華して、さらり爽やか、夏がゆく。
雨の晴れ間にのぞき始めた陽光の輝きのごとく、着る方々の夏を、心弾む予感に満ちたものにしてくれる。今や夏の定番、サマーウール作務衣。
彩りは、萌えるような真夏の新緑に映える“しもふり浅茶”です。鮎が一年の旅を巡り、故郷の川に泳ぎ昇り来たるように、今年もまた嬉しい再開です。
サマーウール作務衣 涼風(さまーうーるさむえ すずかぜ)
暑さを忘れ、趣の風物詩を楽しむ慶び…先人の知恵と現代の知恵が日本の佳き夏を蘇らせる。
「夏にウールを、サマーウールを着ましょう」という大胆な提案には、当会スタッフの中にも、お客様に一笑にふされるのではないかと心配するものもいました。だが、勇を決して発表したところ、これが見事に大ヒット。
その要因はまず、素材の特性の素晴らしさにあります。
軽くて薄く、通気性に優れ、さらさらと肌に優しい柔らかな感触は、実に心地よく、涼感もたっぷり。スタッフも、絶賛の嵐という結果に、改めてその良さを実感したものです。
その影響を受けてか、2年ほど前から洋装の世界でもクールウールと称して採用しはじめ、いち早く先鞭をつけた当会としては溜飲を下げたものでした。
さまざまな高機能の付加により、夏がさらに楽しく。
しかも、当会のサマーウールは様々な機能も加味しています。
まず防縮性や防シワ性を高める樹脂加工。
小さく折り畳んでも座ってもシワになりません。
さらに、強い撚糸のクレープ糸を使用することによりケバ立ちを抑え、ほこりがつきにくくなっています。
加えて、水をはじく強力な撥水加工までプラス。雨はもちろん、コーヒーや食事中の不始末も心配ありません。
この夏は、サマーウールをまとって、日本の夏を再発見してみてはいかがですか。
サマーウール作務衣 華厳(さまーうーるさむえ けごん)
高温多湿な日本の夏をより涼しく楽しむために。
夜明けに朝顔を愛で、昼は打ち水の心地よさにうなずき、よしずの創る陰で涼をとる。夜は縁日をひやかし、花火に声を上げ、家に戻れば、縁側で蚊遣りをたきつつかたむける杯もまた嬉しい…。
四季折々に風雅が漂う日本において、夏ほど、多彩な和の情緒があふれ、日本人であることの慶びを再認識できる歴史はありません。
しかし、いかんせんこの国は高温多湿。
そのため先人たちは衣服や素材にも様々な工夫を凝らしてきました。綿や麻などの天然素材、紗や絽などの透かしもの…夏の和の装いはここに極まったかと思われました。
しかし、和の文化を追求し、作務衣の専門館と呼ばれ、果てしない挑戦を信条とする当会としてはうなずけない。そこで試行錯誤の開発の末、ウールを新素材とする夏の作務衣を発表したのが、五年前でした。
サマーウール作務衣で日本の夏を再発見!
先人たちの創意工夫に学び、現代の最先端とも言うべき知恵により生まれたサマーウール。その新素材をまとい暑さを忘れることにより、懐かしく情緒あふれる日本の夏の文化がそこはかとなく蘇り、お楽しみいただくことができるのです。
それはまさに温故知新ならぬ知新温故。
夏だからこそ颯爽とした黒をビシッとまといたい。涼しげな男らしさを求める硬派のあなたへ贈ります。