これ、藍染ですか!?いや恐れ入りました。感服の声に思わず頬がゆるむ。今年の夏は、外出が多くなりそうだ。
“あれ?いつもと様子が違うような…”と首をかしげておられるあなたの姿が目に浮かぶようです。意表をついたようで誠に申し訳ありません。そうです、いつもなら作務衣の新作がまず目に飛び込んでくるはずなのに…ジャケットですから、とまどわれるのも無理はありません。重ねてお許しを乞いながら、私どものご提案の説明をさせていただきたいと存じます。
身も心も解放される季節だから…
若い頃の思い出をたどる時、最も鮮明に印象深く記憶に残っているのは“夏”の出来事だといわれます。それだけ、この季節は他に比べても身も心も解放され柔軟になるということでしょう。じっとしていられない季節、心の翼を広げてすてきな思い出をつくる季節――それが、この夏だと思います。
ご夫婦で、またご家族での旅行や外出の機会が増えるこの季節に、当会からジャケットを中心としたカジュアルなファッションのご提案です。
正藍染 縮みシャツ
お洒落に夏をくつろぎたい…
なぜか胸がワクワク。なんだか身も心も解放されてしまいそうな――夏。
でも、解放感とだらしなさは別物。こんな季節だからこそ、こざっぱりと涼しげなお洒落でキメてみたいもの。それでもできるだけシンプルに。何気なく見えるシャツ姿でも、趣味の良さや気品が見る人に伝わるようなお洒落をご提案いたします。ショートパンツや帽子などを組み合わせてお楽しみください。ガラリとイメージを変えても、夏は寛容です。
きびらのれん-生平暖簾-
麻の質感、シンプルなデザイン。なぜか-なつかしさを感じます。
麻の原糸をそのまま手紡ぎし、糸さらし(漂白)をしないまま平織りにした麻布を“生平”と言う。生平織では指折りの産地である近江から届けられた「きびらのれん」四点。手紡ぎ、手織り、そして麻の持つ素材さからただようさわやかさは、これからの季節には一服の清涼剤。分けてくぐるときの手ざわりの味もまた忘れがたく…。
生平の素朴さと爽やかさを生かした四作品をご紹介します。禅問答の如き「まる」、曲線が楽しい「ひさご」、素朴さ極まる「みの」、そして風のたなびきが伝わるような「むぎ」。いわゆる“のれん”として使うもよし、またお部屋のインテリアとしての使い方も面白いでしょう。
創作のれん-日本のまつり-(2)
祭りの熱気や掛け声までが部屋に満ち溢れるような暖簾-思わず引き込まれてしまう
京都が誇る染織デザイナー清水章夫氏が描き上げた力作<日本のまつり>シリーズのうちから三点<三社><七夕><竿灯>を御紹介いたします。
原始布織による本麻の硬質な質感の中に、それぞれの祭りの持つ伝統や情緒、そして熱気までもが香り立つように描かれています。粗目の生地に対して精緻を極めたデザインの対比はみごとの一語。もう、これは使うというより、アート・インテリアとして飾りたいほどの絶品。おはやしや掛け声、騒めきなどが部屋に満ちて-夏がやってきます。
創作のれん-日本のまつり-(1)
原始布と呼ばれる古代織技法が、いま鮮やかに甦る-
まだ、木綿や絹がこの世に生まれる遥か昔から先人たちは、山野に自生する草や木の皮から糸を紡ぎ布を織っていた。この“原始布”と呼ばれる技法は、時を越え、細々ながらも何千年来ほとんど変わることなく現代に継承されている。確かに衣料素材としても役割はすでに終えているかもしれないが、手紡ぎ、手織りであるが故の粗目の質感や繊細さは捨てがたいものがある。
そこで、この原始布技法による“創作のれん”の開発がなされた。手紡ぎ手織りによる本麻の質感に加え、京版画の第一人者清水章夫氏の手になる芸術的なデザインが、原始布に新しい生命を灯したといえよう。使うというより、飾るにふさわしい――絶品である。
二部式着物 正藍染飛騨刺子 ぼたん(2)
松坂木綿を正藍染古代裂をアクセントに。
正藍染の濃い藍地に白糸で刺した蝶の群舞。このコントラストの妙と端正なまでの美しさは着る人はもちろん、見るものの心をとらえてはなさないことでしょう。
素材は高級綿として有名な“松阪もめん”。染めは正藍染と本格派。また前作と同様に、蝶の頭部に“古代裂(こだいぎれ)”を使用。目立たず控えめでいながら、随所に高級感を配した奥ゆかしさこそ、飛騨刺子の情話といえましょう。
二部式着物 正藍染飛騨刺子 ぼたん(1)
飛騨刺子の純朴な美しさが大好評!春の新作をお届けします。
前号で始めて登場した飛騨刺子の二部式が大変な評判を呼びました。当会としましても、二部式の先兵として送り込んだ自信作だっただけに嬉しさもひとしお。早速、春の新作をご用意させていただきました。
春を待ち望む思いを蝶に託して刺す――。
中部山脈の山間を縫うようにたどりつく飛騨高山。盆地特有の底冷えのする寒さが足元からはい上がってきます。この地で女性たちはその昔から、質素で素朴でありながら独創性に富んだ刺し模様を生み続けているのです。
外は一面の銀世界。炉端に座った母と娘が黙々と針を進めながら想うことは、やがて来る春への賛歌だったことでしょう。そんな想いが布地にみごとに描き出されています。草木が芽吹き、やがて花が咲き乱れる季節ともなれば、我が世の春とばかりに舞い踊る蝶々たち――。この蝶をモチーフに刺したのが、春の新作「てふてふ」です。
正藍染 ノーカラージャケット
藍を着る夏
ドキッとするような原色プリント、フワッと浮き上がりそうなパステル・カラー…まるでパレットの上の絵の具のように、この季節はさまざまな色が溢れてきます。そんな中で、シックで素朴、そして奥深い色“藍”がなぜかひと際目立ちます。目を通してその手ざわりまで感じてしまうこの色に夏はよく似合います。しっとりと落ち着いた端正な色調でありながら、ハッと目を射るみずみずしさ。着る人の心まで偲ばせる藍染めは、年齢を問わぬ女性の美しさの象徴といえましょう。
正藍染野袴 水縹(みずはなだ)
ひと季節早く-これが粋の極意。それにしてもなりが良すぎる!
「いよっ、なりがいいねえ…」などと言います。格好いいねえ-という意味ですが、粋な姿を目にした時など思わず口をついて出る粋な言葉です。昨年の夏、発表した“紗の袖付き羽織”などこの言い方がぴったりする一枚。今回は、野袴とコーディネートしてみましたが、これまたピタリと決ります。この羽織、盛夏用と思われがちですが、春から初夏にかけての着用も粋なもの。見る人をして“粋人”と言わせたいなら、ひと季節早くから…。それにしてもこのなりの良さは、驚きですネ。
藍飾り麻混 ルパシカ(2)
麻混の爽やかさと肌ざわりを重視!
立ち衿から両肩にかけて正藍叢雲絞り染の藍飾りを付け、ボタンはシンプルで着やすいように前開きにしました。また正藍染の帯ひもを使って大きくアクセントをつけました。
素材は、麻35%、綿65%の麻混。爽やかさや肌ざわりの素朴さを重視しています。身頃や袖はとにかくゆったり。帯ひもで長さは調節できます。左記のようにさまざまな着方ができますし、ズボンも好みに合わせてどうぞ。暑ければ袖を上げて半袖にもできます(ロールアップ)。
10歳は若く見えるな――という声もあり、お洒落感覚は抜群。散歩だけではもったいないこの季節にぴったりの一着です。