一枚のお便りから生まれた新作。
「五十の声を聞こうかという頃になって、やっと和装の良さが分かりかけてきました」
こんな会員の方からのお便りが目にとまりました。要約すると、次のような内容でした。
「作務衣や和服に興味がわき出した途端、何かにつけて子供の頃のある情景が頭に浮かんでくるのです。
それは、カンカン照りの夏の昼下がり、私の手を引いて歩くおじいちゃんの着物すがたなのです。他の部分はボヤけているのに、おじいちゃんの姿だけがくっきり…幼心にも、それは鮮烈に映ったのでしょう。
今思うと、その着物は紗のように透けていて、触るとザラッとした感じがあったように覚えています。着道楽だったおじいちゃんには叶わないでしょうが、あの着物すがたに一歩でも近づきたいと思っています…」
そして最後に「私の昔話が作務衣づくりのお役に立てれば幸いです」と結んでありました。