納得がいかないから四種の植物染液を加えた
藍が基本となった薄線――これが二人が打ち出した結論。
「藍は日本人の心の色です。そして草木の芽吹きや自然の色どりはやはりみどり。これをどう組み合わせて彩にするかが大きなポイントとなりました」と石塚さん。身振り手振りもまじえ、表情がイキイキしてきた。
まず先染めの糸揃えから。ヨコ糸はムラのないきちんとした緑系のものが欲しいということで、敢えて機械染めにする。そして、タテ糸は遊びのある手染めの正藍というのが石塚さんから秋元さんへの注文。
「ヨコ糸に使う染料を見せたら首をかしげる。実際に染めてみると確かに単調過ぎる。そこで草木を混ぜてみようということになったわけだ」
藍の葉と梔子(くちなし)の実から抽出した染液を少々。そして、黄色味を出すために刈安(かりやす)を多目に、さらに赤みを加えるためにインド原産の蘇芳(すおう)を高級科学染料に少々混ぜたという。深みのある自然な感じのする濃緑のヨコ糸が出来上がった。
「タテ糸の藍染は秋さんの十八番。ほら、これがそうですよ」とタテ糸を見せてくれたが、どう見ても綿の生成色にしか見えない。かせ糸の奥の方が少し薄く藍がかってはいる。
「三回も染めたんだよ。それでいてこれさ。ま、これが藍染の技術ってもんかな」と秋元さんニヤリ。
「紺に近く濃く染めたら分からないけど、これだけ薄いと手染めならではのムラが分かるでしょ。これが面白いんです。機械染めの安定した緑色に、この遊び心のある藍が交わったら…ハイ、これが織り上がったものです」と完成した布地がいよいよ登場した。