JR浜松駅から車で揺られること30分あまり。当会が作務衣創りを委ねる優れた染織の里のひとつ、“遠州”「西ケ崎」の地が見えてくる。かの地で染織りの老舗として代を重ねる辻村染織の七代目当主。四十余年の経験と柔軟な感覚で次々と銘作の誉れも高い作務衣を世に送り出し続ける職人、辻村辰利氏は云う。
「藍は生き物。寒く空気が乾燥した時期こそ、最も染付けがうまく仕上がる」
その経験から編み出された知恵は、ご子息でもある八代目、辻村啓介氏へしっかりと受け継がれ、そして今、その若い感性のすべてを込めた新たな藍染の傑作が目の前に…。
独自の藍染の境地を拓くべき研鑽の集大成
七代目のもとで長年の間、藍染修行を存分に積んだ八代目。七代目に言わせると“超ガンコ者でこだわりを持つ性格”だとか。
「いまはまだ藍染ではオヤジにかなわないけど、いつかは自分なりの新しいモノをと思って、ひとりでいろいろ研究してます」
謙虚ながらも満々たる自信が伺えるその言葉の通り、独自の工夫を凝らした気銘の新作を創り上げてくれました。