伝統様式の装いだからこそ藍の持つ魅力が生きる
“かせ糸”の漬け込みの回数による微妙な色合いの調整、そして川などの豊かな清流を利用して行われる入念な洗いなど…藍染を行う過程は、むろん全てが職人による丹念で手間暇のかかる手作業…。
彼らの鍛え抜かれた感覚と技術が、藍という自然が生んだ原石を至宝の彩りへと高めてゆくのです。
そんな生きている色だからこそ、藍は見る人や着る人を問わず、しんしんと心に滲みてきます。
時を越えて沢山の人々の間で、変わることのない普遍の彩りとして愛され続けてきたのです。
そのためでしょうか。大らかな自然の恵みから生まれた天然色、洗えば洗うほどに豊かになる味わいを持つ藍が、僧侶が作務(雑念をなくすための労働一般のことで、大切な修行とされている)を行うための着衣である作務衣の基本的な彩りとして用いられたのは、悠久の時が流れても変わることのない、藍の持つ普遍性や特性から考えても、至極当然のことであったのかもしれません。
思い浮かべてみて下さい。藍染の綿の作務衣に袖を通した僧侶が、杜に囲まれた薄霧のかかる早朝の庭を静かに掃き清める姿を…。
自然の風合いをそこはかとなく醸し出す藍の彩りが、一幅の絵のような、そんな情緒あふれる風景に実に良く似合う…。
だからこそ、“古き佳き装いである作務衣を現代に復活させる”という趣旨を掲げた当会が発足するにあたり、その成否は、如何に昔ながらの手法をかたくなに守る、優れた藍染の里と職人を見つけられるかにかかっていたと云っても過言ではありません。