「日本人は刺子が好きなんだね。頑張り甲斐があるよ」
「で、これは私からお宅に申し出たいんだが、刺子織の“はんてん”をやってみたいんだよ。刺子織にはぴったりだと思うんだ。作務衣の上から羽織ってもいいし、ジーンズにも合うと思うよ」
と膝を乗り出す。てんてこまいで参ったね――などと言いながら、作品のイメージがわいたらとことんノリまくる。代々受け継いだ職人気質にどうやら灯がともったようだ。
「今回の新作には気が入ってる。期待してもらっていいと思うよ」
前回お会いした七代目が職人らしからぬ柔和さを見せたのに対し、今回の七代目は意欲が前面に出てきているように感じた。
「お宅の会員さんはレベルが高いから、ヘタ打てないんだよ。ま、一枚一枚心を込めてやるしかないね」と七代目はキッパリ。小柄な体を駆使して藍ガメをかきまわす姿からは、話をしている時とはまるで違う雰囲気が伝わってくる。
「前回は前回。やっぱり新作を送り出す時は心配なもの。今回も、一枚でも着てもらえれば、私は嬉しいね」
出た、七代目の名セリフ。でも今回は、七代目は最後まで目を伏せなかった。