四十余年の経験と柔軟な感覚が生み出した刺子織の作務衣――燗熟、七代目の技(2)

「藍は子供みたいなもの。毎晩様子を見守ってやらないとダメになる」
染め場に立つ。薄くから濃くまで度合いに応じて8つのカメが並んでいる。よく見る丸いカメではない。七代目のアイデアによる四角い大きなカメである。「藍が沢山入るしね…」とニヤリ。いわゆる凝り固まった職人気質ではない。
染めてみるか…とカメの前に立つ。柔和な顔がキッと締まる。かきまぜるとカメの中は黄土色。白い糸を漬けて引き上げる。緑色になっている。キュッキュッと絞る度に藍色に変化していく。これが空気酸化という現象。自然の植物の葉から生じ、大気により彩りをつける――まさに藍染の醍醐味の瞬間である。
「藍は生き物。目を離すことなく見守ってやらにゃならん」
毎晩、カメを見回る。だから、七代目のカメには火を起こす穴が付いている。染め場の壁や屋根はススが層になっている。柔軟で合理的な七代目のやり方も、すべて藍に対する愛情から出ている。
まさに“藍情物語”ですね…と軽口を叩くと、七代目は照れた。

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