まず、自分たちが着て楽しいものと考える。しかし、決してわがままではない。どの世代にも通じるポイントをきちんと押さえている。三年モノの作務衣ですよ――と屈託がない。洗いざらしの感覚は、現代の侘び寂びというわけか…
「ピッカピカの新品ってカッコ悪いでしょ?」なるほど、妙に説得力があります…
「せっかく染め上げた生地に軽石かけてたぞ。あいつら何やってんだかねぇ」とベテランの職人が浮かぬ顔。「そういや、やけに洗いをかけてやがったなぁ…」と同調するもの。謎に包まれた若い職人たちの行動が、染め場に不思議な活気を生み出していました。そしてある日、若い職人の一人がおずおずと一着の作務衣を呈示したのです。
全体に、特に衿のあたりに、もう何年も使い込み洗い込んだような跡がはっきりと認められます。何だこりゃ?との問いに大きな声が返ってきました。「ストーンウォッシュです!」
濃淡の隠し柄などセンスもなかなか…
伝統の技法通りに染め上げた正藍染の生地を、意図的に洗いざらしの感覚に仕上げたとのこと。「ピッカピカの新品ってかっこ悪いでしょ?」との問いかけに、ハッとするような説得力がありました。
つぶさに点検すると、染めも確かだし、作務衣の様式・形式もきちんと出来上がっています。しかも、よく見ないと分からないような糸染めの段階を違えた濃淡の生地が、隠し柄のようなグラデーションになっています。
最初は苦虫を噛み潰したような表情だったベテランたちも、「もう少し色落としてもいいかな?」などと乗ってくる始末。
洗えば洗うほどに渋さが出てくる正藍染の味わいがハナからみごとに表現されている作務衣。称して「正藍染作務衣ストーンウォッシュ」の誕生です。若い職人たちの感覚は、いかがでしょうか。