目で涼を得る。『透かしの美学』ここに極まる。
風にそよぐ木々の透間から差し込む木漏れ日に、肌で感じる以上の視覚的な“心の涼感”をおぼえる…。その自然が醸し出す涼感を意識的に取り入れたのが、夏における衣・食・住の風物詩。簾、打ち水、金魚鉢、江戸切子、そして紗や絽…。それは高温多湿な日本の夏を、目でも涼を得るために工夫された、先人たちの英知と粋の賜物であります。
その粋を作務衣を通じてお愉しみいただくために、私どもでは『透かしの美学』とテーマを掲げ、透間豊かな紗や絽の作品を発表して参りましたが、「紗や絽を超えた、盛夏だからこそ表現できるもっと豊かな“透間の粋”を創ってもらいたい」という会員の方々からのご要望が近年ひっきりなし…。
それならば単にその声にお応えするだけではない、二千年の夏という格別な機会に相応しい『透かしの美学』の記念碑ともなるべき究極の作品を創りあげようではないかと、この春から開発に着手。古来より伝わる「搦織(からみおり)」という技法を採用することにより、遂に新作「搦織作務衣 京極」の完成に漕ぎ着けました。