野蚕作務衣(2) (のがいごぞめさむえ)

悠久の伝統技法で生まれ変わった野蚕絹!
待つこと半年、遂に完成した野蚕絹の作務衣が送られてきました。冒頭の一声はまさにスタッフ全員の心境でした。
野蚕ならではの陽光を思わせる光沢、不均等な凹凸から生まれる野趣に富んだ質感、そして、ハイライトはその染め上がりでした。不均等で染まりにくい難点である着色格差逆に生かした奥行きのある味わい深い彩りは、お見事の一語。中国の職人恐るべし――という実感です。
これも絹、そしてこれこそ絹――このような言い方が適切かと思われます。ただ、野蚕絹は希少品、今回は現地への直接依頼のおかげでやっと270着を確保することが出来ました。品切れの際は、ご容赦ください。

野蚕作務衣(1) (のがいごぞめさむえ)

染めにくく、不均等、野生児のような原糸…
“ホントにこれ、野蚕の絹で作ったの?!”――完成した作務衣を前に立ち尽くすスタッフの沈黙を破った一言がこれでした。
実は、野蚕絹で作務衣づくりを目指した計画は、その糸を手にした時点で大きな壁にぶつかったのです。この野蚕の糸は、家蚕のそれに比べ、偏平で太く、不均等で凹凸があり、しかも色は白に非ず……とまさに野生そのもの。
もちろん、そのことは承知の上だったんですが、この野蚕糸の持つインパクトは想像以上のものがありました。実際問題として、まず家蚕糸しか扱わない日本の現場では、野蚕の糸を織ったり染めたりは困難とされていたからです。
そこで決断。当会としては初めて海外に作務衣づくりを依頼することとしました。何千年もの昔から、野蚕絹を織って染めている中国には、それにふさわしい伝承の技法があるはず、そして、それを成している名うての職人が居るはずです。
当会が目指す作務衣の形式、風合い、色合いなどの細かい指示が中国は遼寧省丹東市に届けられました。

野蚕の繭(のがいこのまゆ)

いかがですか、この逞しさ。大きさ、そして大地を思わせる色――これが、山野に在って落葉樹の葉を食べながら自生している天然の蚕の繭です。もちろん、この繭から採れる糸は絹。生育の状況から<野蚕絹>と呼ばれています。
絹といえば、屋内にて桑の葉を与えられ飼育した蚕の繭から採る糸(家蚕絹)のこと――というのが通り相場なだけに、この天然の蚕の写真には驚かれたかもしれません。しかし、彼らから言わせれば、「オレたちが絹のルーツなんだ!」ということになるかもしれません。
確かに生産や採算の効率から考えれば、絹のほとんどが家蚕(養蚕)で占められているのも無理はありません。ですが、逆にいえばその希少性や天然ならではの独特の光沢、粗野とも思える感触、大小さまざまな不均一性の特性を活かせば、家蚕糸にない魅力が引き出せるかもしれない――と当会は考えました。
現在、野蚕で絹を作っているのは、世界でも絹の発祥地といわれる中国のみ。すぐに取り寄せた野蚕の繭玉が見せる圧倒的な野性味に驚嘆。当会の発想、着眼は間違いではないとの意を強くしました。
そして完成した野蚕絹の作務衣――さあ、ご覧下さい。

綿シルク作務衣 柿渋濃淡(めんしるくさむえ かきしぶのうたん)

柿渋に10~12色の染めを加えた京都・西陣の逸品。
毎回、到着を心待ちにする京都の新作。この春は柿渋の<綿シルク>です。
ヨコ糸に上質シルクの紬糸。タテ糸に綿糸。綿糸は青柿から絞り発行させ二年ほどねかせた柿渋汁一色の染め。絹糸の方は濃、中、薄と3つに分けてそれぞれに3~4色、計10~12色の染めを加えて何段階にも濃淡を付けています。
柿渋以外の草木染の種類は残念ながら企業秘密とのことで、当会もそれを知ることはかないません。これだけ色を使うと、普通ならベタッとして品の無いものになるのですが、さすがに京都。ユニークでありながらとても上品に仕上がっています。
当会の10周年ということで、京都。西陣の職人さんも頑張ってくれたとか。技術がなければ成しえない柿渋濃淡。さあ、お目見えです。

春刺子作務衣(はるさしこさむえ)

春風に誘われて、うらら。
窓を開けると柔らかな風が撫でるように通り抜けてゆく。この風に誘われて外に出る。春ならではの官能的な匂いがする。すべての境界線を取り払ったみたいなぼかし絵の世界に溶け込んでゆく。こんな迷宮に身をゆだね、春うらら…。
こんな気分のときに身を包む作務衣は、少し素朴な感じのするものがいい。野趣に富み、そのくせ柔らかさを持ち、季節に合わせた彩りがあれば、とてもいい。
素朴で柔らかい春の肌ざわり…。春を意識した<さしこ>はいかがでしょうか。

“心の書斎”と呼ばれる作務衣の魅力を問う(2)

素材、意匠ともに装いとしてまさに完璧…
作務衣の素材の基本は綿、染めは藍。つまりすべてが天然、自然の恵みにて創られたもの。作務衣を着ると、どこか懐かしく、ほのぼのとした安らぎを感じるという方が多いのは、そんなところにもあるのかもしれません。
前述したように作務衣は、もともとは僧侶が作務を行う際に着用するために生まれた作業着です。それは、歩く、座る、身体を動かすといった、人間本来の基本の動きに基づいたもの。しかし、私たちが今過ごしている毎日は、そういった身体を動かして働くという基本からは、ほど遠くなってしまっている気がします。
現代において作務衣がブームになっている背景には、煩雑な生活の中で私たちが忘れかけていた“人間らしさ”を、肌を通して思い出させてくれるからなのでしょう。
【写真】
先人が生み出した優れた意匠の冴え。身体の動きを綿密に計算して創られた和装の傑作品。
1、衿に芯を入れ込むことにより衿元の着崩れを防ぐことはもちろん、寒い季節における風の吹き込みをも防ぐ。
2、ゆったりとした身頃から先細りへと続く筒袖は動きやすさを重視したもの。
3、身幅に適度な余裕を持たせ、身体の動きに自在に対応。座る、立つ、基本動作も非常に楽。
4、腹部を締め付けないヒモとゴム仕様にて着こなしも楽なズボンはポケット付で何かと重宝。
5、ズボンの裾はゴム入りで、歩く姿も凛々しく引き締める。足元から入り込む寒風もシャットアウト!

“心の書斎”と呼ばれる作務衣の魅力を問う(1)

優れた和の装いを生んだ先人の知恵に脱帽
作務衣とは、古来より僧侶たちが作務(さむ:雑念をなくすための労働一般のことを言い、大切な修行とされている)を行うために着用したものです。
四季を通じて厳しい修行をする際に着ることを前提で考えられたものだけに、その着やすさ、動きやすさ、丈夫さは格別。はるか昔にこんな機能性を生み出した先人の知恵や工夫にはただ感服させられるばかりです。
機能性に加え、高い精神力が作務衣の魅力
その“古き佳き装い”である作務衣を復刻し、次代へと送り継ぎたいという趣旨で発足したのが『伝統芸術を着る会』ですが、作務衣を主題として取り上げたのには、この装いの持つ高い精神力に魅かれたからだと言います。
袖を通すだけで背筋がピンと伸びる感覚、仕事や世間のわずらわしさから解放され心が洗い流されてゆくような気分。まさに“心の書斎”と呼ぶに相応しい優れた装いだというのが理由。
さらに、この精神性の高さに加えて、優れた機能性と合理性。しかも、着るだけで「渋さ」と「粋」を演出できる見栄えの良さを併せ持った装いは、確かにちょっと他に類を見ないものです。

ブラックジーンズ作務衣

洗い晒しのような渋い風合いの一着。
若い人たちが着ているようなジーンズとは一線を画します。大人には大人のジーンズを…。その思いで作り上げた「ジーンズ作務衣」。彩りが違います。風合いが違います。渋い色合いの魅力がたまりません。この早春、粋な大人がグンと増えるに違いない。
“ジーンズは好きだが、若者が着ているようなものは気恥ずかしい…。”新作の開発に当たっては、そんな会員の方々の声がまず始めにありました。
確かに、大人には大人のためのジーンズがあってしかるべき。年輪を重ねた人が着るほどに、渋い輝きを増す一着があっていいはず。その想いが、今回のような奥深い、風合い豊かな仕上がりにつながったのです。
ご覧のようにありきたりのジーンズではありません。大人の彩りを目指して、生地は13オンスの黒を採用。そしてその生地にて製品に一旦仕立てて、それをほどよい風合いがかもし出るように洗いをかけたのです。実はその兼ね合いが難しかったのですが…。
何度も試作を重ね、これで良し!となった作品は、単なるブラックの彩りではない、まるで洗い晒しのような味わい深い仕上がりとなりました。この一着にて、渋く、粋な大人の魅力を振りまいて下さい。

ジーンズ作務衣

より個性的なデニム作務衣を…と開発したのが、ここにご紹介します「ジーンズ」です。
「ジーンズ作務衣」はGジャンやGパンを作る厚手のジーンズ生地をそのまま作務衣に仕立てました。ごわっとした感触が着込むほどに身体に馴染み、味が出る…ご愛用の一着になること請け合いです。

インディゴダンガリー作務衣

若々しく着こなして、汗をかいたらジャブジャブ丸洗い。
作務衣の普及活動に勤しんで早数十年。おかげさまで私どもの活動も実を結んで参りました。
軽やか、涼やか、若々しさで人気で「インディゴダンガリー作務衣」。綾織りの薄手の綿布にて、その着心地は春風のようです。