いかがですか、この逞しさ。大きさ、そして大地を思わせる色――これが、山野に在って落葉樹の葉を食べながら自生している天然の蚕の繭です。もちろん、この繭から採れる糸は絹。生育の状況から<野蚕絹>と呼ばれています。
絹といえば、屋内にて桑の葉を与えられ飼育した蚕の繭から採る糸(家蚕絹)のこと――というのが通り相場なだけに、この天然の蚕の写真には驚かれたかもしれません。しかし、彼らから言わせれば、「オレたちが絹のルーツなんだ!」ということになるかもしれません。
確かに生産や採算の効率から考えれば、絹のほとんどが家蚕(養蚕)で占められているのも無理はありません。ですが、逆にいえばその希少性や天然ならではの独特の光沢、粗野とも思える感触、大小さまざまな不均一性の特性を活かせば、家蚕糸にない魅力が引き出せるかもしれない――と当会は考えました。
現在、野蚕で絹を作っているのは、世界でも絹の発祥地といわれる中国のみ。すぐに取り寄せた野蚕の繭玉が見せる圧倒的な野性味に驚嘆。当会の発想、着眼は間違いではないとの意を強くしました。
そして完成した野蚕絹の作務衣――さあ、ご覧下さい。