綿、麻、絹の三絲織(さんしおり)(1)

季節風の変り目、風が凪ぐときに降る細い糸の雨。音もなく降るこの暖かい雨は、草木の芽を伸ばし、花の蕾をふくらませてゆく――春の新作、そのイメージは<はるさめ>。
綿、麻、絹の糸で表情豊かに織られ、春らしい彩りに染められた作務衣の面を、正藍染の“雨がすり”がひそやかに降り注ぐ。匠の技が成し遂げた稀に見る高感度な作務衣の登場――こんな雨なら、濡れて行きたい。
三つの素材の個性が絶妙の味わいを…
まずタテ糸。綿と絹の糸を組み合わせ、そこに綿と麻をより合わせた交撚糸をミックス。ここまでの糸はすべて生成の糸です。
これに、先染めの藍染綿糸(雨がすり)を、織師石塚久雄の感覚で配した上で整経します。ヨコ糸はすべて麻――この複雑な糸構成で織り上げたのが写真です。
とにかく、太さも強さもまるで違う三つの素材による糸で織るのですから大変。途中で切れたり糸と糸が混ざりあったり…どの織職人も、この三絲織には手を出さないのも無理からぬこと。
それだけに、高度な技術と手間ひまかけた労力により織り上がった反物は絶妙。
綿のしなやかさに麻の風合、絹の光沢が混じりあい、その中を正藍染め雨がすりが走り抜けるという前代未聞の織物が誕生しました。

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