瞬間的に緑から青へ…その変身は藍の描くドラマ
藍染の原料となる蓼藍はタデ科の一年草。降り注ぐ陽光、大地を濡らす慈雨、畑を渡り行く爽やかな風…大自然の中で育つ藍はまさに天然の宝物。
現在のような染めの技法の発祥はさだかではありませんが、正倉院や法隆寺の御物の中には見事な藍染の布が残っており、3~4世紀に藍草(蓼藍)が渡来した際に、染めの技法も一緒に伝わったのではないかと云われます。
染めの過程に見せる藍の姿は神秘そのものです。蓼藍の葉を発酵させて固めた藍玉を、カメの中でさらに自然発酵させると茶緑の樹液が生まれます。
この液に綿を紡いで作った“かせ糸”を漬け込み引き上げると、空気に触れた途端、緑色の糸が鮮やかな藍色にドラマチックに変身するのです。
その劇的な瞬間は“空気酸化”と呼ばれ、藍染の魅力をさらに神秘的なものにしています。
藍の濃淡を決めるのは、この漬け込みの回数。濃い藍だと10~15回ほどで、その色に応じて、かめのぞき、藍白(あいじろ)、浅葱(あさぎ)、藍、紺(こん)と呼ばれます。