いにしえから愛され続ける素晴らしき染め手法
藍。その言葉にそこはかとなく趣と深い味わいを受けるのはなぜでしょう。
中国では紀元前1世紀の頃、すでに「礼記」という書物の中に藍という言葉が登場するほど歴史は古く、現存する最古の藍染を施した布はエジプトのピラミッドから発見された4~5千年前のものと云われており、藍染めが太古から人々の間で用いられていたことをしのぶことができます。
日本でも千年以上の歴史を持ち、かの「源氏物語絵巻」にも登場しており、「青はこれを藍に取りて、藍よりも青し」という、中国の筍氏の流れを受けて生まれた“出藍の誉れ”ということわざひとつをとってみても、藍に対する人々の深い畏敬の念が感じられます。
また藍染の布は虫が嫌う、殺菌の効能があると伝えられ、江戸時代には広く庶民に広まるようになりました。
藍は、人の心までも染め上げてしまう“時代を超えた彩り”といえましょう。
ちなみにヨーロッパでは、明治8年に政府の招きで来日した英国の科学者アトキンソンが「ジャパンブルー」と命名して以来この名で呼ばれており、アメリカでは安藤広重の「東海道五十三次」に描かれた鮮やかな空や水の藍色から「ヒロシゲブルー」と名づけられ、現在では日本の代表的な色として世界に認められるまでになっています。