一年、三百六十五日が過ぎると気分も新たに年が始まります。いつ、誰が考え出したのか知りませんが、こんな時間の区切りというのはとてもいいものです。
人生が、いや歴史がただ何百何十万何十日…と区切りもなしに続くとしたら、味も素っ気もないものになることでしょう。
年号があったり、百年を世紀で表したり、一年は十二ヶ月、ひと月は三十日という具合に霧があることは、日々にメリハリを付け四季の移ろいも合わせて、私たちの暮らしをみずみずしいものにしてくれる、とても人間的なシステムだと思います。
伝統の儀式や様式、お正月は桧舞台です。
その最も象徴的なものが“正月”です。
十二月は三十一日の深夜まで取り立てに走り回る借金取りも、除夜の鐘と同時に“おめでとう”――これは別に落語の世界だけの話ではありません。
新しい年のめでたさや晴れがましさの前では、旧年のイヤなことやつらいことも姿を消してしまうということです。
という訳で、今年も残りわずか。
何かと大変だった今年も、一夜明ければ希望に満ちた新しい年のスタート。
何代にもわたり伝承されてきた儀式や様式の舞台が、松が取れる頃まで華やかに厳かに展開します。
家族全員が、あたかも時代劇やドラマの主人公みたいに気取っていたり、お父さんがお父さんらしかったり…多少のテレくささはあっても、それでいいのです。それが、まさにお正月なのですから。
みんなが日本人になってしまう初詣には、和装の人もどっと繰り出します。そんな中で、思い切って異彩を放ってみませんか。古くて新しい装いの組み合わせ。重厚にして斬新、参詣の人たちのため息を感じながら闊歩。
作務衣で迎える正月には、格別の味わいがあります。