一年の計、元旦の儀式。その佳き習わしが今や…。
桃源郷に遊ぶ――とでも申しましょうか。
理想を追い求める人生は、ふと気づくと、驚くほど時の流れが早いもの。
つい先日、春を寿ぐ心地よい調べを耳にしたと思っていたのに、街には師が走る季節の兆しが漂い始めています。
一年使った心の旅のわらじを脱ぎ、家族揃って心身ともに清水を浴びるような、清々しいお正月はもう目の前。
とはいえ、年賀の席も今やめっきり様変わり。
洋風ナイズされた時代に生まれ育った若者方は、一年を通じて最も日本人として生まれた慶びが堪能できるお正月といえども、その過ごし方は如何せん、賑やか三昧の洋風…。
伝統を重んじる和の風が時代の空気を確実に変えつつあるとはいえ、一朝一夕にはいかぬものなのでしょうか。
会員の方々にはお分かりいただけると思うのですが、幼心にも感じた元旦の朝の一種の緊迫感。大黒柱がずいっと姿を現わし屠蘇をいただき、頼もしい中にも畏怖を覚えた、みそぎのようなひととき…。
思わず背筋が伸びるあの時があればこそ、それからの一年にかける思いが際立ったのです。
それが消えつつあるのも時代の流れ…と割り切ってしまうことの善し悪しを論じるつもりはありません。
どんなに形が変わろうとも、新年祝う気持ちに違いはないのですから…。