オランダ船で長崎へ――粋でいなせな江戸っ子を陶酔させた
インド半島の西海岸、マルバラ地方にサントメ(英語名セントトーマス)という港町があります。江戸時代、このサントメで織られた織物がオランダ船にゆられ、マカオを経て長崎の港へやってきました。時代を考えればこれは大航海。
今回のお話は、はるばる海を越えてきたこの織物についてです。
まさに織物の黒船――インドから華麗なる縞模様がやってきた。
この織物のことを唐桟(とうざん)といいます。細番手の木綿地に細かい縞を織り出した布地のことで、その名の由来は生産地サントメ(ポルトガル語)から来ているようです。
最初は、そのまま漢字を当て“桟留”と呼んでいたようですが、その後に国内での生産が始まると、輸入品の区別をするため“唐桟”と呼ばれるようになったと言われています。
唐桟の唐は、その昔はるかに遠い外国を意味したものでしょうか。
唐人(外国人)が運んできたからとか、唐物屋(舶来品を売る店)で売られていたからとかさまざま。また、一部では、長崎のオランダ人居留地の名称からとって“奥島”などとも呼ばれていたようです。
つまり、外国からやってきた縞織物というわけです。