本藍染刺子織作務衣 彩雲と羽織(ほんあいぞめさしこおりさむえ さいうんとはおり)

匠の技を着る。藍の空を彩る積雲の如き自由な意匠。
お待たせしました。八代目の新作のお披露目です。
伝統的な本藍染にしっくりと馴染んだグラデーション部分の切り替えしが、実にいい。まさに「彩雲」の名のごとく、藍色の空に優雅な彩りを描く雲のように、のびのびとした自由な雰囲気を醸し出しています。
織りは独特の凹凸が微妙な味わいを奏で、丈夫でコシの強い生地を生み出す刺子織。ですが、これがまた、八代目ならではの探究心とこだわりが活きているのです。
「彩雲」は大小の刺子を綿密な計算によって組み合わせており、伝統的な礎の中に施された、新鮮な色の配列や意匠は、見事な仕事と舌を巻くばかり。その味わいをより引き立てるために、ズボンはビシッと一色の刺し模様におさえました。
「これなら人前に出しても申し分ないだろう」という七代目のお墨付き。着て行く先々で満座の注目を集めること間違いなしの逸品です。

本藍染刺子織作務衣 彩雲開発話

春眠暁を覚えず。かといって伝統芸術を着る会といたしましてはうたた寝している訳にはまいりません。新しい命が芽生える春を前に新作をと、スタッフ一同ねじり鉢巻で昨年より知恵を絞っていたところへ、嬉しいニュースが飛び込んできました。
一報の主は会員の方々にはおなじみの辻村染色七代目当主、辻村辰利さん。作務衣の専門館と呼ばれる当会の数ある作務衣の中でも名作との誉れ高い、あの刺子織作務衣「唐法師」を手がけた、当会きっての名匠です。
「息子が個展を開くことになってね。なかなかいいモノができてるんだ。ぜひ、見に来てよ」
息子さんとは八代目、辻村啓介さんのこと。七代目のもとで十二年、藍染修行を積み、襲名後は茶葉染作務衣を始め、独自の染や織りに挑んだ新しい感性の作務衣を創り、大好評を博している事はご存知の通り。
独自の道を切り開いてきた八代目の個展、しかもめったに息子を褒めない七代目のたっての誘い。これは!と弾む胸を抑えつつ駆けつけたのですが、作品を前にして、ときめきは高鳴るばかり。
どの作品も、伝統的な礎は残しつつ、若い斬新な感覚が盛り込まれており、特に意匠の面では僭越ながら七代目を超えたのではないかという声もチラホラ。会場を訪れた、染や織りに興味のある方々、和装のプロからも高い評価を得ていたのです。
早速、この意匠を活かした作務衣創りを八代目にお願いしたところ快諾を得て、ついに刺子織と藍染の魅力を存分に堪能できる5年振りの新作「本藍染刺子織作務衣・彩雲」が誕生しました。

正絹黒刺子4点セット・正絹黒刺子袴(しょうけんくろざしこよんてんせっと・しょうけんくろざしこはかま)

初春の光の中に、袴姿で立つ。日本男児の誇りが五体を走る。
黒刺子作務衣を愛用なさっている岩田さんから、「黒刺子で袴を作ってもらえないだろうか。この生地の腰、手応えのある質感、貫禄のある風合い…どれをとっても袴の素材にぴったり。ぜひとも…」というお話を戴きました。
なるほど、とさっそく試作にとりかかり、出来上がった黒刺子の袴にスタッフ一同惚れ惚れしてしまいました。
岩田さんのおっしゃる通り、袴に仕立てた時の堂々たる風格は、黒刺子の魅力が一段と増して感じられるよう…羽織を合わせればなおさらです。岩田さんを始め、会員の皆様の感性、センスには、教えられることばかりです。
さっそく、黒刺子を作務衣と袴の両方でお楽しみ頂けるようセットを作りました。
なお、袴はお手持ちの作務衣の上着を組み合わせても、そのままお使い頂けるよう独自に工夫をしております。袴だけでもお求め頂けますので、すでに黒刺子作務衣をお持ちの方はもちろん、このお正月に袴をという方にもおすすめします。

正絹刺子織作務衣 紫紺と羽織(しょうけんさしこおりさむえ しこんとはおり)

最高の「染」だから最高の素材と織で仕上げました。
最高の草木染を施すのだから、素材も織も高級のもので、紫紺染の魅力を余すところなく表現したい…。そう考えると素材はいうまでもなく「正絹」。そして織は、やはり「刺子織」になりました。
鮮やかな絹に浮かび上がる紫紺色。杜若(かきつばた)の花の色にも似た濃艶な赤みの紫が、刺子織により、さらに味わい深い光の表情を生み、まさに極上の布地に仕上がりました。
当然完成した作務衣は、「伝統芸術を着る会」の名にふさわしい、まさに珠玉の逸品となりました。写真をご覧頂くだけでも、袖を通す時のひんやりとした絹の感触、滑らかな肌触り、そして、この作務衣を纏う凛としたご自分の姿がきっとご想像いただけることと思います。
幻といわれた伝統の「紫紺染」を当会の心意気と技術で蘇らせた「正絹刺子織作務衣・紫紺」、この素晴らしさを是非、ご堪能下さい。
お手持ちの羽織では合わせきれません。やはり共布・同色でどうぞ。
絹刺子という特徴を持つ作務衣ですと、やはり、お手持ちの羽織では合わせきれません。共布・同色による羽織をぜひご着用下さい。

幻の紫紺染(しこんぞめ)に挑む。

粋を極めた江戸紫…究極の草木染、遂に完成。選ばれたものだけが、纏うことを許された高貴な色。
当会ではここ数年、コーデュロイ作務衣に始まり、ジュンロン・スエードなど、新しい素材を用いた新作を次々に発表、作務衣の新たな可能性に挑戦してきましたが、やはり「伝統芸術を着る会」としましては、失われつつある古き佳きものに光を当て、現代に蘇らせるのが本領。
それを忘れていたわけではありません。その難しさから幻とまでいわれた究極の草木染「紫紺染」に挑み、密かに研究を重ねていたのです。
試行錯誤の末、この度遂に「紫紺染」による最も高貴な色「江戸紫」と呼ばれる深い紫の再現に成功いたしました。
「草木染」というと、渋い落ち着いた色という概念がありますが、草木染しかなかった平安時代でも、文献によりますと高貴な方の衣服に鮮やかな色のものが多く、金銭・労力をおしまず工夫すれば、鮮やかな草木染も可能だったということになります。
その代表的名ものがこの「紫紺染」なのです。
最も困難で最も高貴な「紫紺染」
紫紺は山野に自生する多年草、紫草の根で、植物染料での染色中最も難しいものとされています。
紫紺染の紫はシニコンという色素によるものですが、シニコンは冷水にほとんど溶けず、他の植物染料のように煮出すと緑黒色に分解してしまいます。
ですからまず石臼で挽き、摂氏60度以下の温湯で時間をかけて抽出しなければなりません。これに灰汁で処理した布を浸染し、繰り返し染めていきます。
また紫紺は、絹でなければ発色が悪く、綿ではその色が十分に出ないという特徴があります。
いくら良い色も染まっても、染色工程が複雑で手間がかかり、しかも絹でなければ鮮やかに色が出ないとなれば、一般の庶民がその色を手にできるはずもなく、聖徳太子の時代から冠位十二階で定められているように、紫紺染の紫が最も高貴な色とされてきたわけです。
また、伊勢皇大神宮の幕、宮中の儀式殿・斎殿の幕もこの紫紺染によるものです。

綿刺子織作務衣(めんさしこおりさむえ)

発表と同時に大評判となった「正絹刺子織作務衣」。
この通称“絹ざしこ”の圧倒的な質感や存在感を「綿素材」で再現してもらえないだろうか…といった声が続々と寄せられています。
ただ、“絹ざしこ”が現実に人気商品として稼動しているのにいかがなものか――当会としても頭の痛いところでした。
しかし、限定品ならどうだろう。会員さんの要望でもあるし…との声もあり、特別に期間限定品として登場させていただくことになりました。
「正絹絹刺子織作務衣」と同様に、織りは同じ太さの糸で凹凸を付ける「崩し織刺子」という伝統の技法。柄も同じく小鹿の毛並み(斑点)を模した「鹿の子模様」。素材だけが上質の綿に変わります。
出来栄えはご覧の通り、質感のすばらしさは変わることがありません。

正絹刺子織作務衣 黒刺子と羽織(しょうけんさしこおりさむえ くろざしことはおり)

着て誇らしく、人に見せたくなる一着。圧倒的な質感を持つ絹と刺子の組み合わせです。
皓々と照る月の輝き、歳月のつみ重ねが生み出す表情――。
「きぬ」と「さしこ」が個性を主張しながら、それぞれの良さを引き立たせている。響きも清冽な「きぬざしこ」。
シリーズ新作、二年越しの登場。これほどの一着があると、誰かに逢いたくなる。話したくなる。一献かたむけたくなる…秋の夜長が有難い。想いは、満ちて望月。
知人、友人、大切な人を客人として迎える時。また客として人を訪ねる時――この作務衣なら文句はないでしょう。人への想いを着るもので表す、こんな最上級の表現ができたらとても素敵だと思います。
一枚の作務衣が、人と人のコミュニケーションのかけ橋になる…こんな当会の夢が、いま着実に実現に向かって歩を進めています。

正絹刺子織作務衣 黒刺子開発話

もうすぐ100にも及ぼうかという作務衣を開発し、会員の皆様にご提供している当会のスタッフも、仕事を離れれば作務衣の好きな一人の人間。ですから好みもさまざま、作品の好き嫌いだってあるのです。
そんなスタッフが、こと「人に見せたい一着」という点に限れば、ほとんど意見を一致させる作務衣があります。
その一着というのが、一昨日の秋に開発した「絹刺子作務衣」です。華麗な絹の輝きに、刺子の存在感のある質感が交わったこの作務衣の風合いと表現力は圧倒的。スタッフはおろか、会員の皆様をも一様に唸らせたものでした。
絹と刺子がおたがいの良さを引き出しあう…
着て誇らしく、人に見せたくなる作務衣――これは「人と作務衣の関わり合いを考える」という照合のコンセプトを受けるに最もふさわしい一着ではないでしょうか。
というわけで、今回の巻頭を飾る新作は、絹と刺子の組み合わせ、これ以外にはない!と衆議一致を見ました。
色は、黒。といっても真っ黒ではありません。刺し模様の質感が微細な白と黒の世界を展望し、全体の色彩感としては、濃い鼠色を思わせます。まさに「黒刺子(くろざしこ)」。素直にこれを作品名として頂きました。
この彩りと質感を流麗に気高く包み込んでいるのが、絹ならではの輝き。なにしろ、刺子に織るため、通常の3割近くも多く使われている絹の光沢が刺子独特の凹凸を鮮やかに際立たせています。思わず触ってみたくなるこの質感――。
織りはもちろん刺し子織。通常の刺し子織は地布になる糸より刺子部分の糸の方が太くなりますが、この絹刺し子織は、同じ太さの糸で浮き織りにして凹凸をつけています。
これは「崩し織刺子」という伝統の技法。この刺し子織による質感が、逆に絹の輝き過ぎを抑え、総じて格調高さを生み出しています。絹と刺子がお互いにその良さを引き出し合っているということです。
本来的な意味からすれば、水と油に近い「絹」と「刺子」の組み合わせが、ここまで高い品質レベルで完成。まさに、人に見せたい一着です。

絹刺子織 茶刺子羽織

作務衣にはもちろん、野袴にも“きぬざしこ”の羽織はよく似合う。
きぬざしこ――この響きの良さは、まさに風が運んだ玉の音。
絹と刺子を組み合わせるという発想は、当会だからこそできるものと自負しております。
素材は正絹100%、染めは樹木染。刺子で織ったため絹糸の量が増え、絹はその優雅な輝きだけではなく、質感の豊かさももたらしてくれました。
秋冬に着る絹の作務衣にふさわしい機能と趣を持った一着です。

絹刺子織 茶刺子野袴(きぬざしこおり ちゃざしこのばかま)

質感に富んだ輝きと、清冽な響きが聞こえてくるような一着。
古装としての印象度が強い野袴は、まさに着用するだけで存在感が際立ちます。
その昔、武士たちが本袴を脱ぎ捨て心を解放させたこの野袴。きりっとひもを結べば、臍下丹田に活力湧き、野遊び、散策はまさに踏青の歓びを五体に走らせる――こんなイメージのある野袴が、この現代に新たな生命を宿しつつあることは実に興味深いものがあります。
…それだけに、何でもかんでも野袴に仕立てればいいという訳にはいきません。逆に、この野袴の開発は慎重に吟味を重ねたものでなくてはいけないと思っています。
そんな当会が、迷うことなう野袴への仕立てを決めたのが、「絹刺子」でした。清冽までの気高さと端正さ、そして剣道着などに通じる刺し子織――これを成さずして、何を野袴にすべきか!というくらいの確信のもとに、「絹刺子野袴」が誕生しました。
おかげさまで、この野袴が大好評。しかも、作務衣用の羽織を野袴に合わせたいとのご意向も多く、私どもの判断が間違いではなかったと安堵いたしました。
野袴気分――ぜひ一度味わっていただきたいものです。
一人で簡単に着られます。
前ひもを回して、後ろをツメで止め、あとは後ろひもを結ぶだけ。上着は通常の作務衣より約20センチほど長く仕上げてあります。