懐かしさに拍手、その新鮮さに歓声!試作段階から話題騒然――あの幻の外套<インバネス>が蘇りました。
いつものように開発会議。その日のテーマは「冬、作務衣の上にはおるコート」でした。
普通の和装コートでは知恵がない。では、どうする?座が静まり返った時、“長老”と呼ばれている一人が沈黙を破りました。
「インバネスはどうだろう?」
聞き慣れぬ言葉に百科辞典がめくられます。そして、そこに現れた左のような絵にスタッフ全員の目が吸い寄せられていったのです。
スコットランドで生まれ、欧米を席巻した外套(コート)
インバネスとは、19世紀中ごろ欧米で盛んに着用された外套のことで、スコットランドのネス川河口の町インバネスを発祥の地とするため、こう呼ばれるようになりました。
たけが長く、袖なしで取り外しのできるケープが身ごろについてきます。
日本でも、明治20年ごろに伝わり、大正、昭和の初期まで「とんび」あるいは「二重まわし」などと呼ばれ愛用されていました。現在では、その姿はまったく見ることができず、現存すら危ぶまれていました。
その軽さにビックリ、動きも自由自在!
しかし、この幻となった外套の復元には、その原型が何としても不可欠。四方八方に手を尽くしてやっと一着のインバネスを横浜のテーラー経由でお借りすることができました。
この貴重なインバネスを手本として、それを越えるレベルで復元したのが、ここにご紹介する「正藍染インバネス」なのです。