紗つむぎ作務衣開発秘話(1)

一枚のお便りから生まれた新作。
「五十の声を聞こうかという頃になって、やっと和装の良さが分かりかけてきました」
こんな会員の方からのお便りが目にとまりました。要約すると、次のような内容でした。
「作務衣や和服に興味がわき出した途端、何かにつけて子供の頃のある情景が頭に浮かんでくるのです。
それは、カンカン照りの夏の昼下がり、私の手を引いて歩くおじいちゃんの着物すがたなのです。他の部分はボヤけているのに、おじいちゃんの姿だけがくっきり…幼心にも、それは鮮烈に映ったのでしょう。
今思うと、その着物は紗のように透けていて、触るとザラッとした感じがあったように覚えています。着道楽だったおじいちゃんには叶わないでしょうが、あの着物すがたに一歩でも近づきたいと思っています…」
そして最後に「私の昔話が作務衣づくりのお役に立てれば幸いです」と結んでありました。

銀紗作務衣(ぎんしゃさむえ)

古来から愛されてきた、透かしの美学。
絽や紗の“布地を透かす”という発想や技術は、二千年も昔に中国で生まれたといわれています。
細やかな美的感覚を持つ日本人にとって、この透かしの美学はとても好ましいものだったようで、絽や紗は古くより夏のお洒落には欠かせないものだったようです。
夏のお洒落の格上定番とされてきた紗。圧倒的な透明感を感じる銀紗作務衣には、静電気防止の加工も施されています。

綿絽作務衣 藍鼠(めんりょさむえ あいねず)

季節の光や風を採り込む。
見ているだけでも涼しげな色合いだと思いませんか。その上に五本絽の透間が光を通すのですから、気分は爽快の一言です。
綿素材の五本絽――当会の綿絽作務衣は、ひと季節早めに、春の終わり頃から着用を始められることをおすすめいたします。もちろん、盛夏まで絽の醍醐味を楽しむことができます。
絽や紗は、黒や紺など濃い色の方が透明感が強くて良い――という声もあるようですが、それは色が少なかった頃からの言い伝え。淡い色が見せる透明感はとても自然で柔らかく、心が和むものです。季節の光や風を採り込む一着、いかがでしょう。

緑紗作務衣(りょくしゃさむえ)

光を透かし、夏の主役をさらう。
麻がその感触で涼しさを感じるなら、視覚…つまり目で感じる涼しさもあります。その代表とも言うべきなのが、“絽”と“紗”と呼ばれる織物です。
当会もこれに挑戦。
まず、絽の作務衣「潮騒」を開発して世間をあっと言わせました。
そして春、そこまでは行くまい――という声に逆らうように「紗の作務衣」を発表しました。これが大評判。
藍紗の端正さに比べて、緑紗は“粋”な感じです。

藍紗作務衣(あいしゃさむえ)

透明感から生まれる涼感。
目で感じる涼しさがあります。その代表とも言うべきが、“紗(しゃ)”の装い。炎天下を涼しげに歩くお坊様や女性の姿は、身にまとった“紗”のおかげで強く印象に残っているものです。
あの感覚を作務衣に生かしたい――というわけで完成したのが「藍紗作務衣」です。
この透明感は、“絽”と比べても圧倒的。肌着の白さが透かされて、清烈なまでの涼感が目に飛び込んできます。
この夏の主役――あなたの印象は見る人の心に強く残る事でしょう。

透かしの美学・涼感溢れる夏の織物 絽(4)

季節を先取り、早目に絽を着るのが粋…。
目が粗く透間の多い紗は、通気性に優れていますが、その目の粗さゆえ、染めや模様が難しいことも。
通気性では紗に軍杯が上がりますが、染めや模様では、絽の方が優勢のようです。
どちらも古来から続く夏の代名詞、お好みでお選び頂くのが一番でしょう。
本来、絽は絹織物とされてきました。
ですが、涼感や染め…特に藍染仕上げということになると綿素材の絽織でしょう。さらに価格的な面も加わり、綿絽の人気が高くなってきています。
最近、和服を着る人が少なくなったものの、高級ゆかたや作務衣などにその優雅な涼味を生かそうとする傾向があり、注目です。
絽は典型的な夏の装いです。
しかし、愛好家の間ではひと季節早く着用するのが粋とされているようです。衣替えの五月半ば頃からという感じ。もちろん、盛夏まで約三ヶ月は絽の醍醐味が楽しめるというわけです。
簾と同様に、透かして見せることによって見る人まで爽やかにするというのですから、絽は何とも奥深い織物といえましょう。

透かしの美学・涼感溢れる夏の織物 絽(3)

羅を少し遠い先祖とすると、紗と絽は兄弟のようなもの。ですから、絽の説明をする場合、これをセットにしてお話した方が分かりやすいと思います。
紗も絽も共に、からみ織という技法で織られています。
基本的に織物は、経糸(タテ糸)と緯糸(ヨコ糸)が直角に交差することで平面を作っています。
そして、からみ織とは経糸が二本(地経糸・綟経糸)一組となって、緯糸一本、あるいは奇数(三・五・七)ごとによじり、そこに緯糸を打ち込み透間を作る技法のことを言います。
図のように、紗は、緯糸一本おきによじれを作り透間を作っていきます。この目の粗さが透明感を作るわけです。
一方、絽は一度よじった後、緯糸三本おき、五本おき、七本おきという具合に経糸をよじって絽目という透間を作っています。
紗は、絽目を連続させたものですが、絽の方はその間に平織りを入れていきます。平織りの部分の緯糸の数、三、五、七によってそれぞれ「三本絽」「五本絽」「七本絽」と呼ばれています。

透かしの美学・涼感溢れる夏の織物 絽(2)

二千年も昔に開発された、布地を透かすという技法
ところで布地を透かすという発想や技術は、いつ、どこで生まれたのでしょうか。
発祥は中国です。今から二千年ほど前に“羅(ら)”という織物が現れています。この羅は、透間が大きく、まるで鳥の網のようだったといわれています。
この羅に比べ、透間がぐんと小さくなったのが紗。
この紗は唐から宋の時代にかけて発達し、日本でも鎌倉から室町の時代に盛んに着られていました。
この透間がさらに小さく、目が細かくなったのが絽です。
北村哲郎氏の著書「日本の織物(源流社)」によると、享保六年(1721)に、呉服商から奉行所へ提出した布類の明細書に初めて“呂”という言葉が見られるとありますので、始まりは江戸時代と考えてよいでしょう。

透かしの美学・涼感溢れる夏の織物 絽(1)

庭に面した障子は取り外されて簾がかけてあります。部屋の襖も開け放たれていて、家の奥までが透かして見通せます。
ひっそりと冷たく涼気が流れてくるようなたたずまい――昔から、むし厚い日本の夏をなんとか過ごすためにさまざまな工夫が重ねられてきました。
この簾の発想などは、住む人はもちろん、見る人をしても涼感を与えるという細やかな日本人の美的感覚から生まれたものといえましょう。
優雅な涼味をかもし出す、代表的な夏の装い――
装いとて同じことです。“夏姿”という言葉があるように、夏の衣服は昔から特別に扱われてきました。
麻布、縮み、芭蕉布――など独特の涼感を持つ織物が考えられたのもそのため。中でも優雅な涼味という点では“紗(しゃ)”や“絽(りょ)”という透明感のある織物が出色。初夏から夏にかけての装いとして憧れに似た人気を誇っています。
年配の方ならご存知だと思いますが、戦前にはこの紗や絽の装いはよく見られました。
強い陽射しの中を、透明感のある着物をキリッと着こなして行く女性の姿は、子供ごころにも鮮烈なイメージを植えつけたものでした。
また、絽が盛んに着られた江戸時代の浮世絵には、夏姿としてこの軽やかで透けた薄物に身を包んだ女性が多く登場します。絵師たちの目にも、この装いが何とも鮮やかで、そのくせ気品に溢れたものと写ったようです。

作務衣父の日キャンペーン 3つの「お父さんありがとう」特典付き!

頑固一徹、変わらぬ親父へ。
たまに訪ねても、顔を向けずに背中越し、ぶっきらぼうな応対は相変わらず。照れているのよ、という母の笑い声に、ふんと鼻を鳴らす癖も変わらない。
とはいえ親父、背中がだいぶ小さくなった。
幼い頃、駄々をこねて、この背に何度おぶってもらったことだろう。
今度は自分が、親父の気持ちを背負ってやる番。
のんびりしなよ、と云っても聴く耳持たぬ頑固さに、つい嬉しくて目が滲む。
『父の日』がパッとしないのは、照れ屋が多いせい?
1910年にアメリカのジャン・ブルース・トッド婦人の提唱により始まった『父の日』。お母さんの心に感謝の心を示すための『母の日』が定着し、家族のために頑張っている父親にも、もっと、感謝の意識を捧げましょうというスローガンのもとにスタートしたのですが、『母の日』に比べ、いまひとつ盛り上がりに欠けているというのが現状のようです。
今では世界中に広まった記念日ですが、何となくパッとしないのは、対象が元来照れ屋な男性のためということもあるのかもしれません。
特に息子さんの場合は男同士のためか、何だか妙に照れてしまって、その日が来てもついお父さんに何もせずに過ごしてしまうもの。
本当は心の中では、いつも感謝していて、機会があれば贈物のひとつもしてあげたいと考えているはずなのに…。
『父の日』というのはそんな無器用な男性達にとっても、感謝の気持を示す、いいきっかけを創ってくれる日のはず。
長年あたためてきた感謝の心を表すには何かといい契機ではないでしょうか。
今年の父の日は6月19日。では何を贈れば喜ばれるのか?
『父の日』は6月の第3日曜日、今年は6月19日にあたります。今度こそお父さんに、ありがとうの気持をかたちにしてみてはいかがですか。
では何をプレゼントすればいいのでしょうか?
一般的に考えると、普段良く使い、身に付けるもの、ネクタイやベルトなどがすぐに思い浮かびますし、人気の品でもあるのですが、長年家族のために一生懸命に働いてきたお父さんに、今さら体を締め付けるモノをあげるのは如何なものでしょう。
”リラックスしたい、のびのびしたい…”。
お父さん達はいつもそう考えているはずです。だからこそ、贈物は普段使えて、しかも体を締め付けず、心を解き放せるものが一番だと思います。
”作務衣”を贈るのがブーム。心を解き放せるのがその理由…。
そんな想いも一因なのか、いま、父の日の贈物として作務衣がブームを呼んでいるそうです。
人気の理由は、大人の男性のファッションとして、渋さと味わう深さを持ち、機能的で実用的、しかもゆったりと着れて、お出かけにも気軽でお洒落だからとか…。
実は、静かなブームは何年も前から起こっており、今もお洒落の通の間では口コミなどで徐々に広がりを見せているとか。
だからこそ、今年の贈物は作務衣で決めてみる。
実のお父さんはもちろん、父とも慕う人、お世話になった方にプレゼントしてはいかがでしょうか。ご夫婦お揃いの作務衣を贈ってみるのも素敵なアイディアのひとつ。
「なかなか、いいセンスしてるじゃないか」と、きっと気に入ってくれるに違いありません。