近江麻ちぢみのふる里 近江路を行く(1)

昔の人々は、琵琶湖のことを「近江の海」と呼んだ。モヤのかかった日は対岸が見えず、まるで海を見ているような錯覚におそわれたからだ。
織田信長が天下統一を夢みて城を築いた「安土」は、この豊かな大湖・琵琶湖の湖東地方にある。そして、この湖東地方は、「近江麻ちぢみ」などの特産品を諸国に売り歩いた近江商人発祥の地でもあった。
信長こそ、「近江麻ちぢみ」を諸国に広めた陰の功労者だ。
万葉の時代から我々日本人に親しまれ、あまたの詩歌にうたわれてきた琵琶湖。楽器の琵琶にその形が似ていることから、その名がつけられたという。
この湖では、今も昔と変わらない定置漁法「魞網(とりあみ)」は、琵琶湖が発祥だといわれている。
ホンモロコ・フナをはじめとする魚類、瀬田シジミなどの貝類が、現在も琵琶湖の特産として名高い。中でもフナは、昔の人の生活の知恵から生まれた「鮒ずし」に姿を変えて、最も有名である。
また、琵琶湖の湖東地方は、近江商人の発祥の地でもある。
とくに、近江八幡・五個荘・日野には、現在も白壁と堀を周囲にめぐらし、白亜の土蔵をもつ豪壮な家屋敷が建ち並び、往時の近江商人の財力と暮らしぶりをしのばせる。

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