「よし、絽で行こう!」
新しい作務衣開発のための企画会議は、全員一致で決定を見ました。絽の作務衣づくりというこのテーマこそ、スタッフのすべてが「いつの日か…」と胸に秘めていたものだったのです。
全員が色めき立ち、準備は着々と進みました。色はやはり藍、それも正藍染がいい。ならば、素材は絹より綿だ。藍の色合いを考えたら五本絽が理想的――という具合に、画期的な絽の作務衣が具体的に形となっていきました。
職人のつぶやきが伝統の技法復活への第一歩に。
いよいよ試作です。この企画を持ち込んだ先は、藍染の里として数々の傑作作務衣を生んでいる武州でした。絽の作務衣と聞いて、それは面白いと快諾。職人魂に火が付いたようです。
しかし…。出来上がった試作品を前に、スタッフ一同浮かぬ顔。何か今ひとつ足りない感じなのです。いつも新しく質の高い作務衣づくりを求める限り、つい欲が深くなってしまったのでしょうか。
そのとき、同席していた職人の口から思わぬ一言がこぼれました。
「タツマキでやってみるか…」
一同エッ?という顔。
説明によると、タツマキとは“竜巻絞り染”という最近では滅多に見られなくなった伝統的な藍染技法ということ。布地を絞って染めるため、色に計算できない濃淡が出て模様になるというのです。
とにかく試し染めをしてみようということになりました。